除細動器の歴史
電気的始まり
除細動は心臓に電流を流し、異常なリズムを正常に戻す方法です。その発見は偶然でした。1900年代初頭、ジョンズ・ホプキンス大学の電気工学教授らが交流(AC)ショックで犬を殺す実験を行い、二度目のショックで死んだ犬が蘇ることを観察しました。
初期の試み
クリード・ベック外科医は、心室細動状態の動物の開胸心臓に直接AC電流を当てる実験を続けました。1947年、手術中に14歳の少年の心臓が停止した際、ベックは研究用の金属スプーン(木製ハンドル)をパドルとして使用し、2回のショックで心臓を蘇生させました。その後、欧州やソ連の研究者は直流(DC)除細動や、正のショックに続く小さな負のショックという双相波形を開発しました。
ミロウスキーと夢の種
1966年、イスラエルの心臓専門医ミシェル・ミロウスキーの友人が心室細動で死亡したことが、彼に除細動器開発の動機を与えました。当時、植込み型ペースメーカーは既に実用化されていましたが、除細動器は30〜40ポンドの大型機械で、パドル2つと2名の操作が必要でした。ミロウスキーは、体内に埋め込める小型除細動器の実現を目指し、医療界の懐疑に立ち向かいました。
成功への道
イスラエルでの開発が困難となり、ミロウスキーは米国へ移り、1969年にジョンズ・ホプキンス大学でモートン・モアー博士と共同研究を開始しました。1970年代半ば、犬を用いた長期試験で装置の有効性が確認され、1980年に初めてヒトへの植込みが成功しました。その後、従来の大型パドルは貼付型電極へと置き換わり、双相波形の採用で電力消費が減少し、装置は小型化しました。
承認と普及
1985年に800件のヒト植込み実績を経て米食品医薬品局(FDA)に承認され、1990年にミロウスキーが亡くなるまでに10,000人以上の命を救いました。現在のICDは1980年代の数十分の一のサイズで、寿命も長く、機能も格段に向上しています。心拍リズム異常で突然死のリスクが高い数十万人の患者にとって、ICDは不可欠な命の救助装置となっています。
