ボトックス注射の合併症と注意点
歴史
ボトックスは、Clostridium botulinumという劇毒菌が産生するボツリヌストキシンから作られます。最も毒性の強いタンパク質ですが、治療用には極めて微量に希釈されます。1949年にこの毒素が筋肉への神経インパルスを遮断することが発見され、1989年に医療用途として販売が開始されました。2002年には米食品医薬品局(FDA)が美容目的でも使用を承認し、シワ除去効果で広く知られるようになりました。
用途
当初は眼筋の痙攣などの眼疾患治療に用いられましたが、研究が進むにつれて医学的・美容的な利用が拡大しました。例えば、脳性麻痺児の硬直した筋肉を緩めて痛みを軽減し、四肢の動きを改善する効果があります。また、ジストニアや多発性硬化症、過活動膀胱、顎の食いしばり、多汗症、吃音、片頭痛などにも使用されます。美容面では、唇のボリュームアップ、口角上げ、眉毛やまぶたのリフト、顔の輪郭形成などに注入されます。
副作用
軽度の副作用としては、一時的な打ち身や内出血が最も一般的です。頭痛が起こることもありますが、通常は施術後48時間以内に収まります。その他、めまい、口渇、吐き気、感覚麻痺、倦怠感、皮膚発疹、インフルエンザ様症状などが報告されています。
合併症
稀に深刻な合併症が起こることがあります。注射部位近くに毒素が拡散すると、顔面のたれ(顔面神経麻痺)、まぶたや眉毛のたれが数週間続くことがあります。さらに、毒素が食道へ広がると、発話・嚥下・呼吸が困難になる部分的麻痺を引き起こすことがあります。視界がぼやける、二重視、緑内障のリスクも報告されています。極めてまれですが、致命的な合併症も報告されており、2008年時点で死亡16例、入院87例がボトックス使用に関連しているとされています。ある研究では、ラットに顔面注射した72時間後に脳内に毒素が検出され、脳の片側からもう片側へ移動し、タンパク質を分解し、最大6か月間残存したことが示されています。人間への同様の影響は確認されていませんが、医学界では注意が払われています。
予防策
合併症の多くは投与量や注射技術の不適切さが原因です。また、偽造品が市場に出回っているため、信頼できる医療機関での施術が重要です。一般的な費用は300〜500米ドルで、極端に安価な場合はリスクが高い可能性があります。スパやサロン、ホームパーティーなど医療以外の場所での施術は避け、十分な訓練と資格を持つ医師を選びましょう。妊娠中や授乳中の使用は禁忌です。
