|  | 健康と病気 >  | がん | 乳がん

浸潤性小葉がん(ILC)の症状・診断・治療法

概要

浸潤性小葉がん(Invasive Lobular Carcinoma、ILC)は、乳腺の乳汁産生小葉から発生するがんです。腫瘤(しこり)を触知しにくく、早期発見が難しいことが特徴です。ILC は浸潤性導管がん(IDC)とは異なる増殖パターンを示し、乳房組織や遠隔部位への転移の仕方も独特です。

疫学

2023年の米国では約29万8千人の女性が浸潤性乳がんと診断され、そのうち約10%が ILC でした(National Cancer Institute, 2024)。

主な症状

ILC はしこりを形成しにくいため、初期は無症状であることが多いです。症状が現れるときは、以下のような微細な変化に注意してください。

  • 特定部位の厚みや硬さの増加
  • 局所的な腫脹や満ち感
  • 皮膚の凹みやテクスチャ変化
  • 乳頭の内向き(乳頭陥凹)
  • 乳房のサイズや形の変化

その他、乳房・乳頭の痛み、非乳汁性の分泌、腋窩部のしこりなども報告されています。これらは乳がん全般の早期サインであり、疑いがある場合は速やかに医師の診察を受けましょう。

原因とリスク要因

ILC の正確な原因は未解明ですが、乳小葉上皮の細胞増殖・アポトーシスを制御する遺伝子の体細胞変異が関与しています。リスクを高める要因としては、以下が挙げられます。

小葉癌インシト(LCIS)

LCIS の診断歴があると、後に ILC を発症するリスクが上昇します。LCIS 自体は非浸潤性で悪性ではありませんが、乳がん感受性が高いことを示すマーカーです。

遺伝的・環境的要因

家族歴、ホルモン補充療法(HRT)の長期使用、肥満、アルコール摂取などもリスクに影響します。

診断・画像検査

ILC の診断には、マンモグラフィー、乳房 MRI、超音波が主に用いられます。特徴的なのは、明確な腫瘤や微石灰化が少なく、構造の歪みや非対称性がヒントになる点です。

病理学的サブタイプ

顕微鏡所見に基づき、ILC は以下のように分類されます。

  • 古典型:単列(シングルファイル)に浸潤するパターン
  • 固形型:細胞が大きなシート状に増殖
  • 肺胞型:20 個以上の細胞が集団を形成
  • 管小葉型:単列と管状構造が混在
  • 多形性型:核が不均一で大きい細胞
  • 印環細胞型:粘液で満たされた細胞

マンモグラフィー

ILC はしばしば微小石灰化や明瞭な腫瘤を示さないため、画像上で見逃されやすいです。多発性や両側性の病変は特に小さく、潜在的に見えにくいことがあります。

ステージング

腫瘍サイズ、リンパ節転移、遠隔転移の有無を評価し、TNM分類に基づきステージ I から IV へ分類します。ILC の転移先としては、消化管、腹膜、生殖器系が多く報告されています。

治療の選択肢

治療は腫瘍のステージ、患者の年齢・合併症、腫瘍の生物学的特徴に合わせて個別化されます。主に手術と全身療法を組み合わせます。

手術

浸潤性小葉がんは浸潤が広範囲に及ぶため、経験豊富な外科医が十分な切除マージンを確保できることが重要です。早期の限局性病変に対しては、乳房温存手術(腫瘍切除術)+放射線療法が、乳房全摘出術と同等の生存率を示すエビデンスがあります。

多発性や広範囲の場合は、乳房全摘出術が推奨されます。リンパ節評価は、センチネルリンパ節生検または腋窩リンパ節郭清で行います。

全身療法

術後の補助療法として、放射線、ホルモン療法、化学療法が用いられ、再発リスクを低減します。ILC はエストロゲン受容体陽性であることが多く、内分泌療法(タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬)が有効です。

補完代替医療(CAM)

CAM は治療に伴う副作用(ホットフラッシュ、夜間発汗)を緩和する可能性がありますが、がん自体の根治は期待できません。新たにサプリメントや代替療法を開始する際は、必ず担当腫瘍医と相談してください。

リスク低減・予防

LCIS 診断後の化学予防(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬)は、将来の浸潤性乳がんリスクを低減します。ホルモン補充療法は最小有効量・最短期間にとどめ、家族性リスクが高い場合は予防的乳房全摘出術も検討されます。

支援リソース

患者会、オンラインフォーラム、カウンセリング、オンコロジーナースナビゲーターなどが、精神的・実務的支援を提供します。早期診断と最新治療により、ILC の長期予後は改善しています。

予後因子

予後は以下の要素に左右されます。

  • 診断時のステージ
  • 腫瘍のグレード・サブタイプ
  • 手術マージンの状態
  • 患者の年齢・全身状態
  • 治療への反応

乳がん - 関連記事