癌治療における陽子療法

仕組み

陽子は正の電荷を持つ原子核で、これをビーム状に照射して腫瘍を破壊します。陽子は腫瘍に到達した瞬間にエネルギーをほぼすべて放出し、周囲の正常組織への放射線被曝を最小限に抑えます。そのため、放射線腫瘍医は高線量を腫瘍に集中させつつ、副作用を減らすことが可能です。特に小児の成長組織に対する治療で有効です。

装置

陽子療法はサイクロトロンまたはシンクロトロンと呼ばれる加速器で陽子を生成・加速し、磁石で腫瘍へ導きます。患者を囲むように回転できるガントリーが装置に組み込まれ、難しい部位にもビームを照射できます。また、腫瘍の形状に合わせたカスタムスプーンでビームを成形し、治療精度を高めます。

科学的原理

陽子が電子に近づくと正電荷が負電荷を引き寄せ、イオン化が起こります。このイオン化により細胞内の分子、特にDNAが損傷し、細胞分裂能力が失われます。損傷が過度で修復酵素が対応できない場合、がん細胞は死滅します。

メリット

従来のX線放射線と比べ、陽子療法は照射範囲が非常に正確で、正常組織への影響が少ないため、生活の質が向上します。痛みが軽減され、外来での治療が可能です。

適応が認められるがん

2009年時点で、陽子療法は以下の部位・腫瘍に適用されています:肺、前立腺、脳、脊椎・椎体、頭蓋底肉腫、小児脳腫瘍、頭頸部腫瘍、眼の黒色母斑(メラノーマ)など。その他の部位については臨床試験が進行中で、期待できる結果が報告されています。

放射線治療 - 関連記事