放射線治療における長期的な副作用
放射線治療はがん治療の一つで、腫瘍を破壊する効果がありますが、治療が終了した後に現れる長期的な副作用は多くの場合不可逆的です。副作用の発生頻度は、照射線量・治療期間・がんの部位や種類などに左右され、患者が経験する症状も個々に異なります。
脳機能への影響
頭部の腫瘍に放射線治療を行うと、特定の脳機能が低下したり失われることがあります。重篤な長期副作用としては、失禁、記憶障害、運動障害、性格変化などが報告されています。比較的軽度の症状としては、計算が苦手になる、思考が鈍くなるといったものがあります。米国国立がん研究所によると、放射線治療後数か月〜数年で脳機能障害が顕在化することがあります。
不妊症
腹部に放射線を照射された女性は、両卵巣が放射線にさらされると、永久的な不妊や早期閉経のリスクが高まります。男性は精巣への放射線で精子産生が阻害され、不妊になることがあります。ただし、がんが精巣に無い場合は「クラムシェル」装置で精巣をシールドでき、機能を保護できます。女性で片方の卵巣だけが照射された場合は、残存卵巣で妊娠可能性が残ります。また、子宮が放射線にさらされると瘢痕や線維化が起こり、妊娠合併症のリスクが増大します。
勃起不全
放射線が陰茎へ血流を供給する神経や血管を損傷すると、勃起が困難になることがあります。放射線量が高く、照射範囲が広いほどリスクは上がります。通常、治療終了後1年以上経過してから症状が現れます。米国がん協会の報告では、骨盤部に放射線を受けた男性の約3人に1人が勃起機能の低下を経験するとされています。
関節障害
肩、股関節、顎など、放射線照射部位の関節で可動域が制限されたり、完全に動かなくなることがあります。これは放射線による瘢痕組織や筋力低下が原因です。症状は治療完了後数か月から数年で現れることがあります。適切なリハビリや運動療法で疼痛軽減や可動域改善が期待できます。
リンパ浮腫
放射線がリンパ節を損傷すると、リンパ液の流れが阻害され、手足が腫れるリンパ浮腫が起こります。腫れに加えて痛みや筋力低下を伴うことがあります。Mayo Clinicによれば、片側の腕や脚に限られることが多いですが、両側に広がるケースもあります。医師指導のエクササイズや圧迫療法で予防・管理が可能です。
二次がんのリスク
放射線はがん細胞を破壊しますが、同時に正常細胞のDNAに損傷を与えるため、将来的に新たながんが発生するリスクがあります。治療後5年以内に白血病が起こることがあり、他の固形がんは15年ほどかかって発症することがあります。全体的な発生率は低いものの、完全に無視できないリスクです。
