腹部心肺蘇生(OAC-CPR)— 標準CPRのリスクを減らす新手法

概要

従来の心肺蘇生(CPR)は胸部圧迫と人工呼吸で心停止や呼吸停止に対処し、心臓と脳への血流と酸素供給を回復させることを目的とします。しかし、胸部圧迫は肋骨骨折や人工呼吸による感染リスクといった問題点があります。

腹部心肺蘇生(OAC-CPR)とは

腹部心肺蘇生(Only Rhythmic Abdominal Compression CPR、略称 OAC‑CPR)は、胸部ではなく腹部をリズミカルに圧迫することで血液を心臓へ送り込む新しい救命法です。2007年にパーデュー大学ウェルドン生体工学部のレズリー・ゲデス博士が開発しました。

仕組み

人体の血液の約4分の1は腹部臓器に蓄えられています。腹部を圧迫するとこの血液が心臓へと押し流され、標準CPRと比べて約60%多くの血液が心臓に届くと報告されています。圧迫に必要な力は標準CPRと同じく100〜125ポンド(約45〜57kg)で、1分間に約100回のリズムで行います。ゲデス博士は木製の圧迫器具を設計しましたが、手でも同様に実施可能です。

メリット

  • 肋骨骨折のリスクがない:胸部圧迫が不要になるため、肋骨折や胸壁損傷の危険が排除されます。
  • 人工呼吸が不要:腹部圧迫により横隔膜が上昇し、肺から空気が自然に呼気として排出されます。圧迫の合間に再び吸気が行われるため、口対口呼吸の感染リスクを回避できます。
  • 血流逆転が起きない:標準CPRでは血流が逆流し酸素化された血液が心臓に戻ることがありますが、腹部圧迫ではこの現象は起こりません。

追加情報

  • ゲデス博士は OAC‑CPR の開発に対して2007年7月27日にジョージ・W・ブッシュ大統領から「全米技術メダル」を授与されました。
  • 同年11月に米国心臓協会(AHA)は動物実験の結果を評価しましたが、当時は標準CPRの代替として推奨する十分なエビデンスが得られなかったと報告されています。

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