スプリットブレイン実験では何が起きるのか?
スプリットブレイン実験は1960年代に初めて実施されました。当時、てんかん発作を引き起こす神経活動を遮断するために、脳の左右半球を外科的に分離する手術が行われていました。この手術は重度のてんかんに対して有効で、現在でも稀に使用されますが、半球間の連絡が失われることでさまざまな副作用が生じます。ロバート・スペリーらの研究チームは、こうした手術を受けた患者を対象に調査し、脳半球がどのように協調して機能しているかについて画期的な知見を得ました。
半球の優位性
通常の脳では、各半球が特定の認知機能で優位性を示します。左半球は言語処理、論理的思考、細部の分析を担当し、右半球は空間認識、感情の解釈、全体像の把握を得意とします。また、運動や感覚は対側の半球が制御し、左半球は右側の手足や右目・右耳からの情報に主に関与します。
脳梁(コーパス・カロサム)
半球はそれぞれの得意領域を持ちながらも、脳梁と呼ばれる太い神経線維束を通じて情報をやり取りしています。脳梁が切断されると、半球間の通信は途絶え、各半球は脳幹に接続されたまま独立して機能しますが、協調は不可能になります。これが「脳が分割された」状態です。
スプリットブレイン実験の設計
ロジャー・スペリーらが行った実験では、被験者の片方の眼だけに刺激を提示しました。たとえば右眼に画像を見せると、左半球がその情報を受け取りますが、右半球には伝わりません。通常は脳梁を介して情報が共有されますが、スプリットブレイン患者ではこの経路が遮断されているため、右半球は画像を認識できません。
実験結果
スプリットブレイン患者は外見上はほぼ正常ですが、片方の半球にだけ情報が入った場合に奇妙な反応を示します。たとえば右半球だけが鉛筆の画像を受け取った場合、言語中枢が左半球にあるため「鉛筆」と言葉で説明できません。しかし、空間認識を司る右半球は画像を認識しているため、他の物体の中から鉛筆を選び出すことはできます。逆に左半球だけが画像を受け取った場合は、言語で「鉛筆」と説明できますが、詳細な形状や他の鉛筆との違いを判断したり、選択肢から正確に選ぶことは難しくなります。
このように、左右半球はそれぞれ異なる情報処理を行い、脳梁を通じて統合されていることが明らかになりました。
