前庭過活動とその影響

前庭系は、五感の受容体からの情報を統合し、バランス、四肢の動き、姿勢、血圧、覚醒状態、心拍数、免疫反応などを調整する脳の部位です。前庭過活動は、前庭系自体が過剰に働く場合と、前庭機能障害が原因で過活動が起こる場合の二つに分類できます。

前庭障害とADHD

ADHD(注意欠陥・多動性障害)の神経生物学的な原因は未解明ですが、一部の専門家は前庭機能の異常を原因の一つと考えています。感覚情報の処理が困難になると、前庭系が過負荷となり、脳は入力を遮断しようとするか、前庭を刺激しようとして過度の身体運動(いわゆる「多動」)が現れます。

前庭障害と視覚

頭部を揺らす、叩くといった行動は、前庭機能障害への過活動的な反応とみなされます。視覚神経が損傷または機能低下すると、視覚情報と前庭情報が矛盾し、空間認識が乱れます。これに伴う不安感が多動を引き起こすことがあります。目と頭の協調運動を鍛えるエクササイズは、症状の改善に役立つことが報告されています。

前庭障害と聴覚

聴覚情報は前庭系に二通りの影響を与えます。過剰な音刺激はシステムを過負荷にし、逆に音が不足すると前庭機能が乱れます。聴覚情報の処理がうまくいかない子どもは多動傾向が強いことがあります。重要な音と背景音を区別する耳トレーニングや、風邪で耳管が閉塞している場合はそれを解消するだけでも前庭機能が回復することがあります。

中枢前庭障害

眼振やめまいは、前庭過活動の代表的な症状です。眼振は眼球が絶えず揺れる状態、めまいは動きの感覚(めまい)として現れます。これらは中枢前庭の障害によって起こり、眼振は圧迫、めまいは血管系や聴覚系の異常が主因です。目と頭のトレーニングが症状緩和に寄与することがあります。

乗り物酔い

内耳の半規管はバランス調整と聴覚・蝸牛系と連携しているため、過活動が嘔吐、発汗、唾液分泌増加といった乗り物酔いの症状を引き起こします。地平線を見ることで頭部の動きを安定させ、前庭信号を統合し症状を軽減できます。

脳・神経系 - 関連記事