薬物の分布に影響する要因
薬物が血液中に吸収された後、標的組織へ届く必要があります。薬物が体内のある部位から別の部位へ移動する過程を「薬物分布」と呼びます。この分布は生理的要因と薬物の化学的性質に左右されます。分布パターンを正しく理解することは、適切な投与レジメンの決定に不可欠です。
血流量(灌流率)
吸収後、薬物は血液を介して全身へ運ばれますが、各臓器への血流量は異なります。血流量(灌流率)が高い臓器ほど、薬物が多く、かつ速く届きます。そのため、脳・心臓・肝臓・腎臓などは皮膚・骨・筋肉に比べて薬物濃度が速やかに上昇します。
膜透過性
薬物が血液から組織へ移行する際、毛細血管壁の内皮細胞や上皮細胞を通過します。一般に、脂溶性薬物は水溶性薬物に比べて移動が容易で速いです。また、分子量が小さい薬物は大きいものよりも拡散しやすいです。腎臓や肝臓の洞様血管は構造上透過性が高く、脳の毛細血管は脂溶性薬物のみ選択的に通過させ、極性薬物の移動は厳しく制限します。
血漿タンパク結合
血漿中にはアルブミンやグロブリンなどのタンパク質があり、薬物はそれらに結合します。アルブミンは酸性薬物に対して強く結合しやすく、塩基性薬物はリポタンパクや糖タンパクに結合します。ビタミン、ステロイド、金属イオンはグロブリンに結合します。血漿タンパク質に結合した薬物の割合が高いほど、組織への分布は抑制されます。結合率が高い薬物では、結合プロファイルの僅かな変化が臨床効果に大きな影響を与えることがあります。
組織への局在
血漿タンパク質に加えて、薬物は細胞内の様々な分子にも結合します。受容体に結合することで薬理作用を発揮する場合もあれば、化学的性質により特定組織に蓄積し副作用を引き起こすこともあります。例として、テトラサイクリン系抗生物質が骨に結合し、子供の歯の変色を引き起こすことが挙げられます。
