送電線近くの学校における健康リスクと対策
世界保健機関(WHO)は、送電線の近くにある学校で子どもが極低周波(ELF)電磁界にさらされることへの懸念を指摘しています。1970年代から、低レベルの放射線が長期的に子どもの健康に影響を与えるかどうかは議論の的となってきました。近年も送電線から放出される放射線と小児白血病との関連性を調べる研究が続く一方で、一部の政府は予防的な法整備を行い、公共の安全確保に努めています。
放射線の種類
送電線からは電場と磁場の二つが発生します。電場は電線内の電荷によって生じ、電圧(V/m)で測定され、金属や木材などの絶縁体である程度遮蔽されます。一方、電荷の移動は磁場も生成し、これは電線の外部に直接届きます。電場・磁場ともに距離に反比例して強さが減衰するため、送電線から離れるほど子どもの被曝は少なくなります。
健康リスク
WHOは2005年にELF電磁界の健康リスク評価チームを結成し、がんを含むさまざまな健康影響を検証しました。その結果、ELF電場自体が公衆の安全に直接的な危険をもたらす証拠は見つかりませんでした。しかし、ELF磁場と小児白血病の関連は依然として議論が続いています。国際がん研究機関(IARC)はELF磁場をヒトに対する発がん性物質(クラス2B)に分類しています。疫学的研究では、送電線近くに住む子どもは白血病になるリスクが約2倍と報告されていますが、研究手法の限界やバイアスが指摘され、結論は未確定です。2008年までに、磁場が小児白血病増加の生物学的メカニズムを直接示す決定的な証拠は得られていませんでした。
欠けたリンク
上海交通大学医学部のシェン・シャオミン教授らは、DNA修復に関与するXRCC1遺伝子の欠損変異を特定しました。この変異はわずかな塩基置換に過ぎませんが、DNA二本鎖切断が増加し、子どもの白血病感受性が高まります。研究者は、胎児期の染色体再編と出生後の環境要因(例えば送電線磁場)が相乗的に白血病を誘発すると考えています。
対策
米国コネチカット州では、学校や保育園、遊び場など子どもが利用する施設の近くにある送電線を地下に埋設することが法律で義務付けられています。地下埋設はコストが高く、電力会社は敷地所有者との調整や広い用地確保を余儀なくされますが、子どもの健康リスク低減に向けた重要な措置とされています。
