幹細胞治療で期待される再髄鞘化
対象となる疾患
脱髄性疾患は中枢・末梢神経系の神経を覆うミエリン鞘が損傷することで起こります。代表的な疾患は多発性硬化症(MS)で、その他にもギラン・バレー症候群や視神経炎など少なくとも9種類が知られています。多くの疾患は根治療法がなく予後は芳しくありませんが、近年の研究では神経幹細胞療法が有望視されています。
再髄鞘化の重要性
ミエリン鞘は軸索(神経線維)を絶縁し、電気信号が正確に伝わるようにします。脱髄が起きると信号が遮断・乱れ、痛みや筋力低下、協調障害、時に認知障害が生じます。健康な中枢神経系は損傷後すぐにミエリンを再構築しようとする「再髄鞘化」機能を持っていますが、このプロセスが低下すると症状が進行します。
再髄鞘化を促進するアプローチ
医学界は体内の再髄鞘化を支援する方法を模索しています。その一つが幹細胞療法です。幹細胞を血流に投与すると、炎症を抑制しさらなる脱髄を防ぐことが報告されています。また、幹細胞が中枢神経系に十分に供給されると、ミエリン形成が活性化し再髄鞘化が促進される可能性があります。
最新の研究成果
2010年2月24日付の『Journal of Neuroscience』に掲載されたテキサス大学ヘルスサイエンスセンターの研究では、改変した成人幹細胞をラットの損傷脊髄に移植しました。移植後7週間で幹細胞は軸索周囲にミエリン鞘を形成し、電気インパルスの伝導が回復したことが確認されました。研究責任者の曹啓林博士は「幹細胞移植による再髄鞘化は実現可能な治療戦略である」と結論付けています。
成功率
同研究では、ラットの約75%が部分的にミエリン鞘の回復を示し、運動能力も向上しました。
今後の展望とタイムライン
ミエリン修復財団などが中心となり、幹細胞療法による再髄鞘化の研究が進められています。研究者は、脱髄性疾患(多発性硬化症、ギラン・バレー症候群など)の進行を抑えつつ、再髄鞘化を加速させる治療法の開発を目指しています。具体的な実用化時期は未定ですが、複数の治療を組み合わせたアプローチが将来的に有望とする報告も出ています。
