自閉症学生のためのコミュニケーション支援技術
考慮すべきポイント
自閉症は「スペクトラム」障害と呼ばれ、症状や重症度に幅があります。高機能自閉症やアスペルガー症候群の方は会話能力が比較的高いものの、比喩や皮肉といった言語のニュアンスを理解しにくいことがあります。文字通りに受け取り、身体言語や声のトーンを読み取れないことが多いです。
非言語的な方も多数存在し、音は出すものの意思を十分に伝えることができません。また、身体的な障害や微細運動技能の不足がある場合、使用できる支援技術がさらに限定されます。個々の状況は大きく異なるため、適切な支援機器は多様に用意されています。
PECS(ピクチャー・エクスチェンジ・コミュニケーション・システム)
1985 年に Andrew Bondy と Lori Frost が開発した PECS は、絵カードを使って欲しいものを要求する方法です。カードは裏面にベルクロが付いており、携帯用のブックに収納できます。最初は「欲しいもののカードを差し出すとすぐにそのものが得られる」ことを学び、徐々に不要なカードと欲しいカードを組み合わせて選択する訓練へと進みます。
基礎が身についたら、名詞だけでなく動詞や形容詞のカードも加え、ベルクロ付きの「文ストリップ」上でカードを並べて文を作ります。これにより、単なるカード交換から意味のある文章表現へと発展させることができます。
ロー・テック(低価格)デバイス
自閉症の学生向けに、比較的安価でシンプルな電子機器が多数販売されています。多くはボタンを押すだけで録音したメッセージを再生し、食事やトイレなどの基本的な欲求を伝えることができます。
- 話す絵フレーム、キーチェーンレコーダー、デジタル音声レコーダーなど、一般向け製品でも支援ツールとして活用可能。
- 非言語の学生向けには、Cheap Talk、Voice in a Box、Big Mack、Talk Pad、Step‑by‑Step Communicator などがあり、PECS 風のアイコンと録音メッセージを組み合わせて使用します。価格は約50〜300ドル。
- Language Master はカードをスロットに通すと自動で読み上げる方式で、カードに録音メッセージを保存できます。
ハイ・テック(高機能)デバイス
より高度な機能を持つタブレット型の支援コミュニケーション機器も多数あります。代表的な製品は Vantage、Vanguard、Springboard、ECO2、EcoPoint、V、VMax、Eye Max、Tango、Express、M3、DynaWrite などです。
- タッチスクリーンとカスタマイズ可能なキーで、画像や語句を割り当てられ、タップするだけで自然な音声が再生されます。
- 音声合成技術の向上により、以前のロボット的な声から大幅に改善されています。
- 価格は約2,500〜15,000ドルと高額で、保険や助成金が必要になることが多いです。落下や水濡れに弱く、修理費用がかさむ点も注意が必要です。
デバイスの併用
コミュニケーション能力は学習全体に影響します。PECS のような携帯性に優れたシステムと、音声出力が可能な低・高機能デバイスを組み合わせることで、屋外や水辺、車内など様々な環境で言語へのアクセスを最大化できます。複数の支援ツールを適切に使い分けることが、学生の会話機会を広げる鍵となります。
