遺伝子工学における制限酵素の役割
機能
制限酵素は細菌が侵入ウイルスのDNAを切断するために用いる酵素(タンパク質触媒)です。細菌自身のDNAはメチル化などの化学修飾により免疫化されているため、酵素は自己のDNAを攻撃しません。別名「制限エンドヌクレアーゼ」と呼ばれ、DNAの特定の短い配列(認識配列)を正確に切断します。
可能性
同一の認識配列は多くの生物のDNAに共通しているため、研究者は制限酵素である生物のゲノムから目的のDNA断片を切り取り、別の生物のゲノムに組み込むことができます。ゲノムとは細胞核に保存された全DNAの集合です。
構造
DNAは二本鎖の二重らせん構造を持ち、4種類の塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシン、略称A・G・T・C)から構成されます。AはTと、CはGと相補的に結合し、この対合によりDNAの複製や転写が可能になります。
結果
制限酵素でDNAが切断されると、切断部位の一方の鎖が数塩基分だけ突出した「スティッキーエンド」が生じます。受容体側のDNAも同じ配列で切断されていれば、スティッキーエンド同士が相補的に結合します。研究者はDNAリガーゼを用いて、ドナーDNAを受容体DNAに接続し、遺伝子組み換えを完了させます。
利点
制限酵素を利用した遺伝子工学は、医療をはじめとするさまざまな分野で恩恵をもたらします。代表例として、ヒトインスリン遺伝子を大腸菌などに導入し、インスリンを大量かつ低コストで生産できるようになりました。これにより、従来の豚や牛から抽出したインスリンに比べ、効率と安全性が大幅に向上しました。
