乳児のCPRについて
歴史
乳児に対する心肺蘇生(CPR)は、初期の新生児蘇生法から発展してきました。1954年にジェームズ・エラムが口対口・口対鼻の人工呼吸を提唱し、後にピーター・サファーの研究で改良されました。胸部圧迫の概念は、ウィリアム・クーヴェンホーフェン、ジェームズ・ジュード、ガイ・ニックボッカーらの動物実験で外部からの圧力が血液循環を生み、心停止患者を蘇生できることが示されたことに端を発します。1960年までに、これらの技術が統合され、最初の正式なCPRプロトコルが誕生。以後、乳児特有の解剖学的特徴に合わせて改訂が続けられています。
CPRを開始すべき時
乳児が反応しない、呼吸がない、または脈拍が感じられない場合は、直ちにCPRを開始します。誰かが救急番号(日本では119)へ電話をかけている間に、約2分間(5サイクル)人工呼吸と胸部圧迫を交互に行い、その後救急隊に連絡します。速やかな酸素供給が脳障害や死亡を防ぐ鍵となります。
状況の評価
1. 乳児の足裏をやさしく叩き、はっきりと声をかけて反応を確認します。
2. 周囲に危険がないか確認し、過度に揺らしたり動かしたりしないよう注意します。
3. 呼吸の有無を確認します:胸部の上昇を観察し、5秒間口と鼻からの呼気を感じ取ります。呼吸がある場合は助けを待ち、ない場合は次のステップへ進みます。
脈拍の確認
内側の上腕、肘と肩の間にある上腕動脈(橈骨脈)を指で探します。脈拍が確認できれば、人工呼吸のみを行い、脈拍がない場合は圧迫を含むフルCPRを実施します。
気道管理
乳児の場合、頭部後屈・顎先上げの手技はやさしく行います。額に手を置き、数本の指で顎を軽く持ち上げます。口腔内の異物を除去し、窒息の有無を確認します。呼吸時に胸が上がらない場合は、窒息緊急事態として対処します。
人工呼吸(口対口)
胸部圧迫の合間に、やさしい呼吸を2回行います。乳児の口と鼻を自分の口で覆い、できるだけ多くの酸素を届けます。胃に空気が入りすぎて嘔吐しないよう、過度の膨張は避けましょう。
胸部圧迫
胸骨の下半分(乳頭線のすぐ下)に人差し指と中指の2本の指を当てます。胸骨の先端(剣状突起)を押さえないよう注意し、胸の深さの約1/3(約4cm)を30回/18秒のペースで圧迫します。成人よりやや速いリズムで、乳児の心拍数に合わせます。
予防と訓練
赤十字社、病院、認定トレーニング機関が提供する乳児CPR講習を受講しましょう。乳児サイズのマネキンで実技練習を行い、筋肉記憶と自信を養うことが重要です。
