医療従事者のための批判的思考スキル
定義
スタシー・ウォーカー("批判的思考を促すアクティブ・ラーニング戦略"の研究者)は、批判的思考を「判断の際に反省的懐疑心を用いる能力」と定義しています(参考文献2)。ノリスとエニス("批判的思考の評価"の著者)は、批判的思考を「正確な判断を個人の意思決定の設計図として適用する、規律ある知的プロセス」と述べています(参考文献6)。医療従事者は、教科書や研究だけでは明確に答えが示されない状況で、適切な意思決定を導くためにこのスキルを必要とします。
関連性
医療現場での意思決定には、トピックに集中し、余計な情報や断片的な考えを排除することが求められます。たとえば、患者が特定の症状を訴えても、看護師が無関係な症状や質問に思考を逸らすと、適切な対応が遅れます。重要なのは、現在の問題に注意を向け、余計な思考を除外することです。
異なる視点の活用
診断や治療方針を決める際、医療提供者は複数の視点を取り入れます。患者が外科医にセカンドオピニオンを求めるように、医師も同僚と相談しバイアスを避けます。意思決定前に自問すべき質問例は次の通りです。
- 他にどんな見解があるか?
- 別の視点からこの問題を見ることはできるか?
- それらの視点を意思決定にどう活かすか?
要素
R.W.ポール("批判的思考:急速に変化する世界で生き残るために必要なすべての人が持つべきもの")は、医療における批判的思考を以下の8つの要素で構成されると述べています。
- 理解しようとしているテーマは何か?
- 目標は何か?
- 得た情報をどのように活用するか?
- 全ての視点を検討する
- 先入観や仮定を一旦脇に置く
- 医療の原則や理論を論理に組み込む
- 自らの推論や解釈を把握する
- 過去の研究やデータから証拠を集め、理解する
- 決定や情報の結果・影響を考慮する
(参考文献3)
利点
ハンストンとジャクソン(2004年著『臨床委任スキル:専門実践のハンドブック』)は、批判的思考が医療現場で活用されると以下のような効果が期待できると指摘しています(参考文献1)。
- スタッフのモラル向上と離職率低下
- 患者満足度の向上
- 職員間の責任転嫁が減少し、問題解決能力が向上
- 患者ケアの質が向上し、入院期間の短縮、再来院の減少、転倒や怪我の減少
