在宅医療の歴史と変遷
感染症管理の時代
19世紀末、死因の大半は感染症と出産でした。感染症は恐れられ、患者と家族は隔離されました。そのため、病院へ運ぶよりも自宅で治療する方が合理的でした。医師や助産師は軽装備で各家庭を回り、必要な医療を提供していました。
組織化された在宅医療の台頭
アメリカ赤十字社やメトロポリタン生命保険など大手組織が、保険加入者向けに在宅医療サービスや巡回看護師制度を展開しました。1909年までに米国全土で566の在宅医療機関が設立され、感染症や出産支援といった短期的なニーズに対応していました。
効率性の問題
やがて感染症が減少し、慢性疾患が増えると、医療技術や機器、薬剤が高度化しました。これらを各家庭に持ち運ぶより、病院に集約した方が時間とコストの面で有利となり、また「近代的」な医療は病院で受けるべきという認識が広がりました。
費用要因の変化
1950年代、米国経済は好調でしたが病院費用は急上昇し、中低所得層が医療を受けにくくなりました。看護師団体が在宅医療復帰を訴え、議論は政治家まで波及。1965年にメディケア法が成立し、在宅医療費用も支援対象に加わりました。これにより、患者は医療提供形態を選択できるようになりました。
在宅医療への回帰
20世紀後半、ホスピスケア運動が全国的に広がり、在宅医療の重要性が再評価されました。メディケアに在宅ホスピス給付が組み込まれ、民間保険でも同様の特典が追加されました。病院認定機関はホスピス認証制度を整備しました。
現代の在宅医療
現在、在宅医療は末期患者の自宅での最期、障害者、慢性疾患患者に提供されています。高齢者は大病院への移動や混雑が困難なため、在宅でのケアを選ぶことが増えました。かつてのような一回限りの訪問ではなく、長期的・継続的な健康管理が主流となっています。
