人工換気の長期的な影響と合併症
はじめに
緊急時に命を救う人工換気は、気管チューブを挿入し人工呼吸器で呼吸を補助する手技です。しかし、長期間にわたる使用はさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。本稿では、長期的な影響を部位別に解説します。
チューブに起因する影響
長時間の気管チューブ留置は声帯や気道・肺の組織に損傷を与えることがあります。気管の壊死や狭窄(ステノーシス)が起こりやすく、また副鼻腔炎や咽頭の腫脹も報告されています。
肺への損傷
人工換気による肺損傷は主に「バロトラウマ」と「ボリュームトラウマ」の2タイプに分けられます。バロトラウマは肺胞破裂により空気が胸腔に漏れ、気胸を引き起こし、胸管での処置が必要です。ボリュームトラウマは肺胞の過膨張に伴う炎症で、肺組織が不可逆的に損傷し、正常な呼吸が困難になります。
人工呼吸器関連肺炎(VAP)
人工呼吸器関連肺炎は、挿管後48時間以降に発症しやすく、死亡率は33〜50%と高いです。長期的な抗菌薬治療が必要で、早期かつ積極的な管理が求められます。
内在性陽性呼気終末圧(PEEP)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息などで呼気が不十分な患者は、機械的に余分な呼気が残り、内在性PEEPが生じやすくなります。これによりバロトラウマ、ボリュームトラウマ、低血圧、人工呼吸器同期不全、最悪の場合は死亡に至ることがあります。
全身への影響
人工換気は全身にさまざまな影響を及ぼします。鎮静による胃腸運動低下で腸閉塞(イレウス)を起こすことがあり、腎血流低下に伴う浮腫や、正圧呼吸により心拍出量が低下します。また、脳血流の変化によりせん妄や興奮状態が見られることがあります。
