米国における医療請求とコーディングに関する法規制
米国には医療請求やコーディングを直接規定する法律はありませんが、関連する法令が多数あり、医療請求・コーディングは国内で最も規制が厳しい分野の一つです。
詐欺・不正防止(Fraud and Abuse)
最も厳しい法規は、当初は医療向けではなく、1863年に制定された「偽請求防止法(False Claims Act)」です。南北戦争時に政府への詐欺的取引を防止する目的で制定され、以降50回以上の改正が行われました。
1998年、米国保健福祉省(HHS)の監査官事務局は連邦官報に「Billing Code 4150‑04‑M」を掲載し、病院が不正請求から身を守るためのコンプライアンス手続きを義務付けました。この改正により、病院は請求が認められた場合、損害賠償が3倍に引き上げられ、他の事業者は2倍となります。
請求・コーディングに関する規則
以下の行為は偽請求防止法で特に問題視されています。
- 実際に提供していない品目やサービスの請求
- 医学的に不要なサービスの提供
- 実際より重い診断コードでの「アップコーディング」
- 入院期間中に行われた外来サービスを別途請求すること(入院専用とされるサービスは外来請求不可)
- 重複請求
- 「アンバンドリング」― 本来一つのサービスとしてまとめられるべき項目を個別に請求すること
- 転院の場合の「退院請求」― 転院は退院とはみなされず、退院請求の方が高額になるため不正請求となります
- クレジット残高の未返金
プライバシーと電子請求提出
1997年に制定された「医療保険の携帯性と責任に関する法(HIPAA)」は、全国的な識別基準、行政手続きの簡素化、保険加入者保護を目的としています。
医療請求・コーディングに関係する主な領域は、プライバシー基準と電子請求提出基準です。プライバシー基準では、請求書に記載できる情報が制限され、患者本人または法定代理人であることの証明が必要となります。電子請求提出基準は、病院が電子的に請求書を送信することを促進しました。
医療請求・コーディングの主な変更点
- 診断名の全文記載は請求書に記載不可
- 性感染症(HIV を含む)に関する診断は名称を修正する必要あり
- 情報開示請求は患者本人または法定代理人であることの証明が必須
- 全ての電子請求に共通のコード体系が新設され、情報の標準化が図られた
正確なコーディングイニシアチブ(Correct Coding Initiative)
1996年、当時の医療財政管理局(現在のCMS)は「全国正確コーディングイニシアチブ(National Correct Coding Initiative, NCCI)」を設立しました。目的は次の二点です。
- 医師が転勤した際に新たなプロバイダー番号を取得する手間を削減するため、全国共通のコードを整備すること。
- 不適切なコーディングによる支払過誤や詐欺疑惑を防止し、正確な請求を促進すること。
これらの基準は主に連邦・州の公的保険プログラム向けですが、民間保険会社でも参照・適用されています。
