心肺蘇生(CPR)の新ガイドライン
心肺蘇生(CPR)を実施すると、突然の心停止での生存率が約2倍に上がります。米国では成人の死亡原因の第一位である心停止の75%が自宅で起こるため、胸部圧迫と口対口人工呼吸を組み合わせたCPRの手順を知っておくことが重要です。
2005年11月、米国心臓協会(AHA)はCPRの実施方法に関する新たなガイドラインを発表しました。圧迫と呼吸の比率の変更や細部の調整により、CPRの有効性向上を目指しています。2009年10月時点でも、AHAはこの2005年版ガイドラインを採用しています。
ガイドライン策定の経緯
AHAは2005年1月にテキサス州ダラスで開催された「国際心肺蘇生・救急循環医学コンセンサス会議」で新ガイドラインを策定しました。会議では、各タスクフォースが最新の研究成果を評価し、CPR手順の改訂案を提案しました。
歴史的背景
1960年、医師が胸部圧迫と口対口人工呼吸を組み合わせたCPRを初めて実用化し、圧迫と呼吸を一定回数ずつ交互に行う手法が定着しました。
2005年のダラス会議のレビューによれば、従来のガイドラインは呼吸に過度の重点を置いており、血流が低下した状態では肺の酸素需要も減少することが判明しました。その結果、圧迫を中心に、呼吸の回数を減らす方向へと方針が転換されました。
2000年にAHAはこの考え方を反映した新ガイドラインを発表し、2005年にはさらに胸部圧迫の重要性を強調する改訂が行われました。
変更点の意義
新ガイドラインは胸部圧迫の質を高めることで、突然の心停止患者の生存率向上を狙います。具体的には「強く、速く」圧迫し、1分間に100回のペース(新生児を除く)を推奨し、圧迫間の中断を最小限に抑えることが求められます。従来は圧迫手技に関する具体的な指示が少なかったのに対し、今回のガイドラインは詳細なテクニックを示しています。
主な変更点
- 2000年版では成人は15回の圧迫と2回の人工呼吸のサイクル、子どもは5:1の比率でしたが、2005年版では成人・子ども(新生児除く)すべてに対し「30回の圧迫+2回の人工呼吸」の比率へ変更しました。
- 圧迫と呼吸の間隔を短くすることで血圧を維持し、脳や重要臓器への血流を確保します。結果として、子どもや乳児では1分間に12〜20回、成人では10〜12回の呼吸が行われます。
その他の考慮点
- 除細動器の使用に関しては、2000年版ではCPR開始前に最大3回のショックが推奨されていましたが、2005年版では「1回のショック」だけが推奨されます。
- 呼吸確認の手順も変更され、無反応な患者に対してのみ5〜10秒で呼吸の有無を確認するようになりました。
- 気道確保の方法は、2000年版の顎上げ法から、2005年版では頭部後屈・顎先挙上法(head‑tilt, chin‑lift)へと変更されました。
救助者の種類別手順
- 一般市民(レイレスキューア)は、無反応な被救助者に対し2回の人工呼吸を行った後、すぐに30回の胸部圧迫と2回の人工呼吸のサイクルを開始します。レイレスキューアは胸部圧迫なしで呼吸だけを行うことはできません。
- レイレスキューアは脈や循環の確認は行わず、医療従事者は必要に応じて最大10秒で脈拍の有無を判断します。
