院内感染率と長期急性期ケアの実態

背景

米国疾病予防管理センター(CDC)は、毎年約170万人の患者が医療関連感染(HAI)に罹患し、99,000人が死亡すると推計しています。入院患者の5〜10%が感染の対象となり、主な感染部位は肺炎、血流感染、手術部位感染、尿路感染です。これらの数値は、報告された病院データを基にした統計的推定です。

長期急性期ケア(LTAC)

1990年代初頭に設立された長期急性期ケア施設は、重篤な状態から退院した患者に対し、集中治療を継続的に提供することを目的としています。耐性菌を含む医療関連感染の管理も重要な役割です。平均入院日数は約25日とされ、退院後は自宅に戻ることが想定されていますが、LTACに入院時のHAI罹患者数や施設内で新たに発生したHAIのデータは未だ十分に収集されていません。

医療関連感染(HAI)の原因

感染は様々な経路で拡散します。

  • 患者同士、患者と医療従事者、訪問者間の直接接触
  • 飛沫(咳やくしゃみ)による空気感染
  • 適切に清掃・滅菌されていない医療機器
  • 汚染された空調・暖房設備、人工呼吸器やカテーテルなどのデバイス

特に抗菌薬に耐性を持つ病原体(例:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA))は、感染拡大のリスクを高めます。感染源の追跡は時間と労力がかかり、必ずしも効果的ではないため、厳格な感染予防策の実施が重要です。

感染制御対策

1980年代初頭のカナダの研究では、包括的な感染制御プログラムと外科創部感染率のフィードバックにより、急性期病院での院内感染が30〜50%減少したと報告されています。現在の主な対策は以下の通りです。

  • スタッフへの定期的な教育・研修
  • 徹底した手指衛生(石鹸・アルコール消毒)
  • 手袋や防護具の適切な使用
  • 医療機器の厳格な清掃・滅菌
  • 手術時の抗菌薬・防腐剤の適正使用
  • 汚染廃棄物の安全な処理
  • リネンやガウンの適切な除染
  • 血液・体液取扱時の安全対策

今後の報告システム

CDCが2005年に設立したNational Healthcare Safety Network(NHSN)は、医療関連感染の規模と傾向を把握するための全国統一データベースです。品質改善や患者安全のための監視手法の開発を支援し、全ての医療機関に報告を促しています。2009年末時点で、米国内19州の2,000施設がデータを提供していましたが、LTACからの情報はまだ十分に反映されていません。

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