治療的クローニングの利点と課題
歴史
2001年11月、マサチューセッツ州のAdvanced Cell Technology社の科学者らは、治療研究のためにヒト胚をクローンすることに成功したと発表しました。遺伝情報を除去した受精卵に皮膚細胞を導入し、卵が分裂して治療用クローンが作られました。2002年、カリフォルニア州が米国で初めて胚の治療的クローニングを合法化し、翌年には英国がヒト胚クローンから幹細胞を作製する研究ライセンスを発行しました。
議論
中絶反対派は、胚が破壊されることから治療的クローニングに反対しています。彼らは受精卵に細胞を挿入すること自体が人間の命を作り出す行為であり、そこから幹細胞を取り出すことでその命が失われると主張します。「一つの命を犠牲にして別の命を救うことは正当化できない」という倫理的立場です。
メリット
- 患者自身のDNAと完全に一致した臓器や組織を作製できるため、拒絶反応のリスクが極めて低くなります。臓器提供者を待つ必要もなく、手術も不要です。
- パーキンソン病や糖尿病などの既存疾患の治療法や治療薬の開発に有用です。
- 臓器再生のメカニズムを研究するための貴重なモデルとなります。
デメリット
- 治療には胚から抽出した幹細胞が必要で、利用可能な細胞はごく一部に限られます。
- 細胞が変異して腫瘍を形成するリスクがあります。
- 実際に臓器を作製するには膨大な数の卵子が必要ですが、現在の供給は不足しています。
議会の動向
米国議会では治療的クローニングへの関心が高く、党派を超えて賛否が分かれています。ヒトクローン全般の禁止にはほぼ全会一致の支持がありますが、治療目的のクローニングは左派議員からの支持が強いです。現時点で具体的な法律は成立していません。
