単一被験者研究と群比較研究のデザインの違い
心理学者B.F.スキナーは、オペラント条件付けの理論を通じて行動研究に単一被験者研究(シングルサブジェクトスタディ)を導入しました。個々の刺激に対する自由意志的な反応を観察し、行動の変容だけでなくその強度や持続性も測定します。
コントロール群の有無
単一被験者研究と複数被験者研究の最も顕著な違いは、外部のコントロール群が存在しないことです。コントロール群は「現状」を示す基準として機能し、実験群と比較されます。一方、単一被験者研究では参加者自身がコントロールでもあり実験でもあるため、各自が自己比較の対象となります。
行動研究のデザイン
研究者ジョン・B・ワッソンによれば、複数被験者研究では行動変容などの従属変数は各被験者について1回だけ測定されることが多いです。対照的に単一被験者研究では、同じ従属変数を繰り返し観察し、一定のパターンや永久的な変化を確認します。また、同時に観測できる変数は1つだけで、2つ以上の変化が起きた場合は相互作用とみなされます。複数被験者研究は参加者数が増えることで複数変数の同時測定が可能となり、精度と帰属の信頼性が高まります。
ベースラインと介入評価
医薬品の臨床試験では、特定の薬剤の効果を調べるために単一の介入群が設定されます。薬剤投与前にベースラインデータを取得し、投与後の評価と比較することで効果を検証します。単一被験者研究でも同様にベースラインと介入後の測定が必須です。一方、複数被験者研究では、薬を投与しない対照群と投与群を同時に観察できる点が利点です。
研究結果の妥当性への脅威
単一被験者研究は比較群がないため、結果の妥当性にリスクが伴います。内部妥当性を高めるために、ベースライン測定を複数回行う、ケースヒストリーを詳細に取る、統計的回帰分析で変数変化のタイミングを検証するなどの手法が取られます。外部妥当性(結果を広い母集団に一般化できるか)については、単一被験者研究では最も主張が難しい点です。
