膝関節置換術は多くの場合成功しますが、全ての手術と同様に合併症のリスクがあります。合併症は軽度のものから重篤なものまであり、早期の発見と適切な対処が重要です。
血栓症
最も頻繁に報告される合併症は下肢の血栓です。血栓が足に留まる場合は軽度の問題ですが、血栓が剥がれて肺動脈へ移動すると肺塞栓症となり、命に関わる緊急事態になります。術後の早期離床や抗凝固薬の投与で予防します。
感染症
膝置換後の感染リスクは約0.5%と低いですが、手術室の無菌管理や空気ろ過は徹底されています。術後に抗生物質を投与することでリスクをさらに低減します。感染が疑われた場合は早期に外科的洗浄や抗菌治療が必要です。
人工関節の緩み・破損
時間の経過とともに人工関節が摩耗し、関節から緩むことがあります。まれに、術中にインプラントが正しく固定されないケースもあります。最新の素材と固定技術によりリスクは低減されていますが、平均的な耐用年数は約20年です。
創部の治癒不全
肥満や糖尿病などの基礎疾患があると、切開部の治癒が遅れることがあります。皮膚が壊死すると皮膚移植が必要になることもあります。術後の創部管理と適切な栄養管理が重要です。
神経障害
手術中に神経が損傷する可能性があります。特に腓骨神経が影響を受けやすく、足の背屈が弱まります。また、膝周囲の皮膚感覚が低下し、しびれやチクチク感が生じることがあります。多くは6〜12か月で自然に回復します。
可動域の制限
術後に瘢痕組織が過剰に形成されると、膝の屈伸が制限されます。集中的なリハビリテーションとストレッチングで改善が期待できます。
動脈損傷
下肢の大動脈や枝動脈が手術中に損傷することは稀ですが、起きた場合は迅速に止血・修復が必要です。発見が遅れると切断や最悪の場合は切断術が必要になることがあります。
合併症が疑われたら速やかに担当医に相談し、適切な検査と治療を受けることが回復への近道です。
