上皮内乳管がん(DCIS)とは?原因・診断・治療法を徹底解説
上皮内乳管がん(DCIS)の概要
上皮内乳管がん(ductal carcinoma in situ、DCIS)は、乳管の内側に異常細胞が増殖するが、乳管壁を超えていない非浸潤性の乳がんです。浸潤していないため、治癒率は非常に高く、早期に発見すればほぼ完治が期待できます。
病期と位置づけ
DCISはステージ0、すなわち「前がん」として分類され、治療しなければ将来的に浸潤性乳がんへ進行する可能性があります。
乳房の構造
- 小葉(ローブ):乳汁を産生する小さな嚢。
- 乳管:小葉で作られた乳汁を乳頭へ運ぶ通路。
- 結合組織:脂肪や線維組織で、乳管・小葉を支える。
発症と進行
異常細胞が乳管の内壁に集まり増殖するとDCISが形成されます。壁を突破しないため「非浸潤」と呼ばれますが、放置すると一部が浸潤性がんへと変化し、他の臓器へ転移するリスクがあります。
罹患率
米国では新たに診断される乳がんの約20〜25%がDCISと推定されています。
症状と発見
多くの患者は自覚症状がなく、乳がん検診(マンモグラフィ)で微小石灰化として偶然に見つかります。形状が不規則な白い斑点が典型的です。稀に、乳頭からの非乳汁性分泌物や触知できる小さなしこりが現れることがあります。
リスク要因
確定的な原因は不明ですが、年齢、家族歴、BRCA1/BRCA2 などの遺伝子変異、肥満やアルコール摂取といった生活習慣がリスクを高めます。リスクがあるからといって必ず発症するわけではありませんが、認識しておくことで適切な検診や予防策につながります。
診断フロー
まずマンモグラフィで異常が認められたら、追加の画像検査とコアニードル生検(または外科的生検)を行い、異常細胞の有無とエストロゲン受容体・プロゲステロン受容体の状態を確認します。
治療法の選択肢
DCISは早期に発見されるため、治療成績は非常に良好です。化学療法は不要です。主な治療は以下の通りです。
乳房温存手術(腫瘍切除術)
腫瘍がある乳管と周囲の正常組織を一定のマージン(余白)とともに切除します。
乳房全摘術(マステクトミー)
腫瘍が多発性(複数部位)であったり、病変が大きい場合に乳房全体を切除します。
放射線療法
腫瘍切除後に局所照射を行い、残存する可能性のある異常細胞を破壊します。周囲の正常組織への影響は最小限に抑えられます。
ホルモン療法
腫瘍がホルモン受容体陽性の場合、手術後に抗エストロゲン薬を併用します。タモキシフェンはエストロゲン受容体を遮断し、閉経後の女性にはアロマターゼ阻害薬がエストロゲン産生を抑制します。
予後
米国国立乳がん研究財団によると、DCISの10年生存率は98%です。また、全症例の約50〜80%は浸潤がんに進行しません。
重要な留意点
40歳未満で診断された女性や黒人女性は、乳がん関連死亡リスクが高くなることが報告されています。人種差別や慢性的なストレスといった社会的要因が影響している可能性があります。
長期的なフォローアップとして、定期的なマンモグラフィと臨床検査を継続し、再発の有無を確認することが不可欠です。
まとめ
上皮内乳管がん(DCIS)は、ほぼ無症状で検診で見つかる前がんです。手術(乳房温存術または全摘術)に放射線・ホルモン療法を組み合わせることで、10年生存率は98%と極めて高く、予後は良好です。
