唾液腺腫瘍とは?
概要
唾液腺腫瘍は、唾液を分泌する腺にできる腫瘍です。唾液は噛む、飲み込む、話す際に重要な役割を果たします。これらの腺は顔の両側、耳の近くや顎下に位置しています。
全体の約85〜90%が良性(非癌性)で、残りの10〜15%が悪性(癌性)です。多くは成長が遅く、生命に直ちに危険を及ぼすことは少ないです。良性腫瘍は外科的切除が主な治療法です。悪性腫瘍は手術に加え、放射線療法、化学療法、分子標的療法などが組み合わされます。
症状
- 顔・首・顎下にしこりや腫れができる
- 顔・首・耳に痛みや不快感がある
- 口を開けにくい、飲み込みにくい
- 顔面の筋力低下やしびれ、チクチク感
- 口が乾く
- 原因不明の体重減少、倦怠感、発熱
受診の目安
以下の症状が2週間以上続く場合は、早めに医師または歯科医に相談してください。
- 顔・首・顎下に消えないしこりや腫れ
- 上記の症状のいずれかが現れたとき
原因とリスク要因
多くの唾液腺腫瘍の正確な原因は不明ですが、次のようなリスクが報告されています。
- シェーグレン症候群:目と口が乾く自己免疫疾患で、特に耳の近くにある耳下腺(パロティド腺)の腫瘍リスクが高まります。
- 放射線治療歴:頭頸部への放射線照射を受けた人はリスクが上昇します。
- ウイルス感染:エプスタイン・バーウイルス(EBV)やヒトパピローマウイルス(HPV)などが関与する可能性があります。
- 家族歴:近親者に唾液腺腫瘍の既往があると、発症リスクが高くなります。
合併症
- 神経・筋肉障害:腫瘍が顔面神経や筋肉を圧迫すると、顔の筋力低下やしびれが起こります。
- 嚥下障害:食事や飲み込みが困難になり、体重減少や栄養不良を招くことがあります。
- 発話障害:口や舌の動きが制限され、言語が不明瞭になることがあります。
- 転移性癌:悪性腫瘍は肺、肝臓、骨など他臓器へ転移する可能性があります。
予防
確実な予防法はありませんが、リスクを下げるための対策はあります。
- 頭頸部への放射線被曝をできるだけ避ける(必要な場合は医師とリスクを相談)
- EBVやHPVのワクチン接種を検討する(医師に相談)
診断
唾液腺腫瘍が疑われる場合、以下の検査が行われます。
- 視診・触診:顔・首・耳周辺をチェックし、しこりの有無を確認します。
- 問診:症状や既往歴、リスク要因を詳しく聞き取ります。
- 画像診断:X線、CT、MRI などで腫瘍の位置・大きさを把握します。
- 生検:腫瘍組織の一部を採取し、顕微鏡で病理診断を行います。確定診断には必須です。
治療
腫瘍の種類・大きさ・患者さんの全身状態に応じて、以下の治療が選択されます。
- 手術:腫瘍の完全切除が最も一般的です。部位や範囲により手術法が異なります。
- 放射線療法:高エネルギーX線で癌細胞を死滅させます。手術前後や単独治療として使用されます。
- 化学療法:全身に作用する抗がん剤で、手術・放射線後の補助療法や進行癌の主治療に用います。
- 分子標的療法:腫瘍細胞の特定タンパク質を狙う薬剤で、切除不能な腫瘍や再発時に使用されます。
予後
良性腫瘍の予後は非常に良く、手術後はほとんどの患者が完全に回復します。悪性腫瘍は腫瘍の種類・ステージ、患者の健康状態により予後が異なりますが、早期発見・適切治療により多くの患者が長期生存を期待できます。
