前立腺がん治療におけるイチイ樹皮由来薬(タキサール)の概要
イチイ(Taxus spp.)の樹皮は、がん治療薬タキサール(商品名:Taxol)の原料として知られています。米国国立がん研究所(NCI)によると、特に前立腺がんの進行例や再発例に対して高い効果が示されています。
歴史
1960年代初頭、NCIは自然由来の抗がん剤を探すために数百種の植物を調査しました。その中でイチイの樹皮に抗がん作用があることが判明し、後の動物実験でも有効性が確認されました。製品名はイチイの学名「Taxus」から取られ、Taxolと名付けられました。
開発
1991年、製薬会社ブリストル・マイヤーズはTaxolの大量生産契約を締結しました。しかし、1回分の投与に1本の樹木が必要という供給問題がありました。そこで、同属の比較的繁殖しやすい種から同様の有効成分を抽出できることが判明し、商業的な大量生産が可能となりました。
効果
Taxolは1990年代に前立腺がん治療薬として承認されました。主に進行がんや再発がん、ホルモン抵抗性前立腺がんに対して使用されます。副作用として脱毛や好中球減少症(感染症に対する抵抗力低下)があり、使用は慎重に行われます。
薬剤の種類
イチイ樹皮由来の薬剤は大きく2つあります。ジェネリック医薬品のパクリタキセル(Taxolの一般名)と、合成薬のドセタキセル(商品名:Taxotere)です。ドセタキセルはパクリタキセルに比べて副作用が少ないとされています。
今後の可能性
Taxolは他の抗がん剤と組み合わせて使用されることが多く、ニューヨークのスローン・ケタリングがんセンターでは、乳がん治療薬ヘルセプチン(Herceptin)との併用療法が前立腺がんの再発・進行例に有望な結果を示しています。ヘルセプチンは診断時に存在する前立腺がん細胞の増殖を抑制する作用があります。
