血糖測定の歴史とその進化
歴史
血糖測定を最初に試みたのはエンジニアのディック・バーンスタインです。10代で1型糖尿病を発症し、低血糖発作に悩んだ彼は、技術誌に掲載された「血液1滴で1分以内に測定できる」携帯型血糖計の広告に注目しました。販売は医療機関限定でしたが、妻の精神科医の名義で3ポンド(約1.4kg)の機器を650ドル(1969年の月給相当)で購入しました。
この機器は「Ames Reflectance Meter(A.R.M.)」と呼ばれ、Dextrostixという処理済み紙ストリップを使用しました。血液を1滴加えて1分後に洗い流し、色の変化をチャートと照合して血糖値を概算しました。正確さは低かったものの、家庭での測定が可能になったのです。
Dextrostixは1960年代初頭に開発され、最近までバイエル社が製造していました。その後、針と光学センサーで数値を直接表示する新型の測定器が開発され、A.R.M.は「Ames Glucometer」と改称されました。
時代背景
デブ・バターフィールド著『Showdown with Diabetes』(1999)によると、個人用血糖計の本格的な商品化は1980年のパーティでの出会いがきっかけでした。実は、概念自体は30年前にすでに芽生えていました。
内分泌科医のマイケル・ミラー博士はカクテルパーティでベンチャーキャピタリストのテッド・ドアンと出会い、家庭用血糖計「LifeScan」の資金提供を依頼しました。ミラー博士はアイディア自体は自分のものではなく、ディック・バーンスタインに関する記事を読んでインスピレーションを得たと語っています。
理論・推測
バーンスタインは低血糖管理のために自作の測定法を試み、1969年に技術誌の広告で見つけた機器で頻繁に測定を開始しました。食事と測定を徹底することで、糖尿病の合併症の多くを逆転させたと主張しています。
当時の医学界は「人間の血糖値を正常化することは不可能」と断言しており、バーンスタインの成果は学会で認められませんでした。1979年、45歳で内分泌科医になるべく医学部に入学し、日々の測定の重要性を訴える多数の論文や『Dr. Bernstein's Diabetes Solution』といった書籍を執筆しました。
意義
糖尿病は世界的な流行病で、未だ根本原因は解明されていません。しかし、血糖計というシンプルなツールが、患者自身の健康管理に強力な味方となっています。
現状
現在、米国市場だけで9社以上が30種類以上の血糖計を販売し、関連消耗品の市場規模はFrost & Sullivanの調査で1兆円を超えると推定されています。機器は小型化・デジタル化が進み、日々の測定に言い訳の余地はありません。保険適用や医療機関からの供給も整っています。
1966年にトム・クレメンズがA.R.M.の最初のプロトタイプを製作し、1968年に特許を取得しました。当時は医療関係者の関心が低く、「趣味の領域」と揶揄されましたが、今日の数千万の糖尿病患者が日常的に使用する血糖計は、クレメンズの発明が土台となっています。
