コルチゾールが記憶に与える影響
ステロイドホルモンであるコルチゾールは、一般に「ストレスホルモン」と呼ばれ、私たちの体内で様々な重要な役割を果たしています。ストレスがかかると副腎から過剰に分泌されますが、長期間にわたって過剰なコルチゾールが続くと、記憶に悪影響を及ぼすことがわかっています。
古い記憶と新しい記憶
フランクリン・インスティテュートによれば、コルチゾール濃度が上昇すると新しい記憶の形成と、既存の記憶の呼び出しが阻害されることが示されています。
海馬への影響
学習と記憶に関与する脳の中心部である海馬は、過剰なコルチゾールにより機能が低下します。高いコルチゾール濃度は、脳へのブドウ糖供給を妨げ、エネルギー不足を引き起こします。
神経伝達物質への影響
同インスティテュートは、エネルギー供給の阻害に加えて、コルチゾールが神経伝達物質のバランスにも影響を与えると指摘しています。神経伝達物質は脳細胞間の情報伝達を担う重要な化学物質です。
研究事例
ワシントン大学医学部(セントルイス)では、コルチゾール濃度と記憶障害の関係を調べる実験が行われました。被験者51名に対し、高用量・低用量・プラセボのいずれかを投与し、記憶テストを実施しました。最も高用量を投与された群は、記憶機能が著しく低下したことが報告されています。
研究結果の示す示唆
研究責任者のジョン・W・ニューボマー博士によると、記憶障害はコルチゾール投与開始から約4日後に現れ、最高用量を摂取した被験者に限られたといいます。投与を1週間中止した後のテストでは、記憶機能は元に戻っていました。つまり、記憶に深刻なダメージを与えるには、極めて高いコルチゾール濃度が長期間続く必要があり、その影響は永久的ではない可能性が示唆されています。
