MRSA(耐性黄色ブドウ球菌)の概要と症状
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、メチシリン、アモキシシリン、ペニシリン、オキサシリンなどの広域抗生物質が効かない黄色ブドウ球菌の一種です。1974年には全スタフィロコッカス感染の2%がMRSAでしたが、2004年には63%に増加しています。
MRSAの種類
米国疾病予防管理センター(CDC)は、MRSAを「医療関連MRSA(HA‑MRSA)」と「地域関連MRSA(CA‑MRSA)」の2つに分類しています。
- HA‑MRSAは、入院患者や免疫力が低下した人が多く感染するタイプで、病院や介護施設が主な感染源です。
- CA‑MRSAは、過去1年以内に入院や侵襲的医療処置を受けていない健康な人でも皮膚感染として現れ、時に肺炎など重篤化することがあります。
原因
黄色ブドウ球菌は自然変異により抗生物質への耐性を獲得します。抗生物質を不適切に使用すると、殺菌できなかった菌が変異しやすくなります。例えば、処方量を守らない、治療期間を途中でやめる、低濃度の抗生物質が環境中に流出することなどが耐性菌の拡大を助長します。
症状
MRSA感染は最初は赤く腫った痛みを伴う小さなできもの(ニキビや蜘蛛の巣に似た形)として現れます。皮膚表面にとどまることもありますが、膿瘍になると外科的処置が必要になることがあります。膿瘍や切り傷から菌が体内に侵入すると、全身性の重篤感染につながります。悪臭のある膿と発熱を伴う皮膚感染は速やかに医師の診察を受けてください。
検査と診断
MRSAは鼻分泌物や組織サンプルを培養するラボ検査で診断されます。従来は48時間かけて培地で増殖させますが、近年はDNA検査により数時間で結果が得られます。
治療
いくつかの抗生物質はHA‑MRSA・CA‑MRSAともに有効です。特にバンコマイシンは主力薬として使用されますが、近年は一部の株で効果が低下している報告もあります。
CA‑MRSAのリスク要因
CA‑MRSAに感染しやすい状況は次のとおりです。
- 免疫機能が未成熟な若年者
- 免疫低下状態
- 不衛生・過密な環境
- 医療従事者との密接な接触
- 接触スポーツ(皮膚摩擦や切り傷が多い)やスポーツ用具の共有
- 特定の地域(例:ボストン・サンフランシスコの同性愛者コミュニティ)での新株拡散
HA‑MRSAのリスク要因
HA‑MRSAの主なリスクは以下です。
- 過去1年以内の入院歴
- 長期介護施設への入所
- セフェム系やフルオロキノロン系抗生物質(オフロキサシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン)の使用歴
- カテーテルや透析装置など侵襲的医療機器の使用
予防策
予防の基本は手指の頻繁な洗浄と、病院・スポーツ施設などの環境や物品の徹底的な消毒です。傷口は適切に絆創膏で覆い、運動後は必ずシャワーを浴び、寝具は定期的に洗濯・消毒しましょう。また、抗生物質は医師の指示通りに使用することが重要です。MRSAや他の黄色ブドウ球菌感染が疑われたら、速やかに医療機関を受診してください。
