表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)の特性と感染症
概要
表皮ブドウ球菌は、院内感染の主要な原因菌の一つです。遺伝的変異が頻繁に起こり、メチシリンやバンコマイシンに対する耐性が広がっているため、抗生物質治療が難しくなっています。一方で、手術前後に予防的に抗生物質を投与することで感染を抑制できるケースも報告されています。
引き起こす疾患
カテーテルや人工関節など医療機器の植込み、開放創・火傷などの皮膚損傷部位で感染しやすく、以下の疾患の原因となります。
- 脳脊髄膜炎(エンセファロメンジンジティス)
- トキシックショック症候群
- 菌血症、敗血症
- 心内膜炎
- 脳室炎
感染率
正確な最新統計は乏しいものの、2001年の報告では院内感染の約48~67%が表皮ブドウ球菌や同様の凝固酵素陰性ブドウ球菌によるものとされています。1982年のデータでは、急性白血病患者1,000人日あたり約14例が表皮ブドウ球菌感染を起こしていました。現在でも入院患者の約10%が新たに細菌感染を経験しています。
治療法
メチシリン耐性はもちろん、バンコマイシン耐性株も報告されています。治療に最も有効とされるのはリファンピシン(リファジンなど)で、他の抗菌薬と併用することが推奨されます。
予防策
単なる手指洗浄や消毒だけでは完全に防げないため、以下の対策が有効とされています。
- 手術前後の予防的抗生物質投与(セファゾリン、ゲンタマイシン、セフロキシムなど)
- 骨セメントにトブラマイシンを混合したインプラントの使用(ドイツの整形外科医の報告)
- 医療機器の適切な滅菌と管理
これらの予防策と適切な抗菌薬選択が、表皮ブドウ球菌感染の抑制に重要です。
