インフルエンザウイルスの概要
インフルエンザ(通称「インフルエンザ」)は、ウイルスのグループが引き起こす呼吸器疾患です。ウイルスは A 型、B 型、C 型の3種類が知られていますが、ヒトで大流行(パンデミック)を起こすのは主に A 型と B 型です。A 型・B 型は冬季に流行し、呼吸器症状を引き起こします。C 型は通常無症状ですが、まれに軽い呼吸器症状を起こすことがあります。毎年の季節性ワクチンは、主に A 型と B 型の株を対象に製造されています。
感染経路
インフルエンザは寒冷な気候そのものが感染を引き起こすわけではありません。寒い季節になると屋内で過ごす時間が増え、他者との接触が密になるため、ウイルスが広がりやすくなります。感染は、感染者がくしゃみや咳で放出する飛沫を介して主に伝播します。また、ウイルスは表面に付着したまま数時間生存し、触れた手で口や鼻に触れることで感染することもあります。潜伏期間は1〜2日です。
ウイルス構造
インフルエンザウイルスは、オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)に属する球形のウイルスで、直径は80〜120nmです。ウイルスはエンベロープ(脂質二重層)を持ち、宿主細胞の細胞膜から取り込んだ脂質で構成されています。エンベロープの表面にはヘマグルチニン(HA)と呼ばれる糖タンパク質が多数突起し、これが宿主細胞への結合と侵入に重要な役割を果たします。ウイルス内部には8本の一本鎖RNAセグメントがあり、これが宿主細胞に取り込まれて増殖します。
変異と抗原ドリフト
RNAウイルスは変異が起こりやすく、インフルエンザウイルスも例外ではありません。毎年、ヘマグルチニンの表面構造が微小に変化(抗原ドリフト)するため、既存の免疫はウイルスを認識しにくくなります。その結果、毎年新しいワクチン株が選定・製造されます。変異は主に宿主の免疫回避を目的として起こり、免疫が追いつかないと感染が拡大します。
二重感染と抗原シフト
A 型インフルエンザでは、同一宿主が異なる2つのウイルス株に同時に感染すると、ウイルスが遺伝子セグメントを交換(抗原シフト)し、新たなサブタイプが誕生することがあります。これが鳥インフルエンザや豚インフルエンザなど、動物由来の新型インフルエンザ株の出現につながります。家畜や野鳥はウイルスのリザーバーとなり、畜産従事者や野外作業者が感染リスクが高くなります。
1918 年インフルエンザ大流行(スペイン風邪)
1918 年に世界中で猛威を振るったインフルエンザは「スペイン風邪」と呼ばれ、米国だけでも約67.5万人が死亡しました。全世界では推定2000万〜4000万人が命を落とし、米国人口の約30%が感染したとされています。この大流行により平均寿命は約10年短縮されるほどの深刻な社会的影響をもたらしました。
