電子医療記録(EMR)のリスクと課題

電子医療記録(EMR)は、従来の紙ベースの診療記録をデジタル化したものです。Open Clinical の調査によると、紙ベースのシステムは安全性・効率性・高品質・コスト効果の面で十分に機能していないことが示されています。ノルウェー、スウェーデン、デンマークなどの一次医療現場ではすでに EMR が導入されていますが、米国は導入が遅れています。

導入時の抵抗と混乱

紙の記録に慣れた医師や看護師は、EMR の導入に対して抵抗感を示すことがあります。その結果、デジタルと手書きが混在した不明瞭な記録が生まれるケースもあります。Journal of Usability Studies の報告によれば、EMR の操作習得には時間がかかり、学習中は患者に対してコンピュータに向かっているように見えることが、患者の不安を招くことがあります。

信頼性の課題

デジタル文書は保存先のコンピュータやソフトウェアに依存します。システムがクラッシュしたりフリーズしたりすれば、生命に関わる情報が失われる危険があります。また、人為的ミスも問題です。Medscape が紹介した事例では、神経科医が1歳児の診察に本来のテンプレートを誤って使用し、空間・時間・人物の認識ができると記載してしまいました。

責任の所在

診療ノートや処方箋などは、医師の署名が法的責任の証明となりますが、電子システムでは秘密鍵やパスワードで代用されることがあります。これらは盗難やハッキングのリスクがあり、ログアウトし忘れた場合に別の医師の名前で記録が残る恐れもあります。

患者プライバシーの保護

医療記録には薬物乱用、重篤な疾患、感染症、遺伝的リスクなど極めて機微な情報が含まれます。情報が漏洩すれば、患者は仕事や保険の喪失、家族関係の悪化といった深刻な被害を受ける可能性があります。電子記録は紙よりも多くの関係者がアクセスできるため、誰が閲覧できるかを明確に定義し、権限のない者の不正アクセスを防止する仕組みが不可欠です。

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