医療政策における政府の役割とは
医療保障
医療制度は、すべての居住者に法的に医療サービスを提供するユニバーサルカバーと、提供しない非ユニバーサルカバーに大別されます。政府の第一の役割は、国民にユニバーサルカバーを提供するかどうかを決定することです。財政的に余裕のある国ではユニバーサルヘルスケアが主流で、先進工業国のほとんど(米国を除く)や、比較的裕福な発展途上国でも導入されています。
医療財源
医療費の支払い方法は大きく4つあります。
- 一般税収による財源
- 保険料による保険制度
- 自己負担(個人が直接支払う)
- 寄付・慈善事業
自己負担は、深刻な病気の治療費が数万ドルから数百万ドルに達することもあり、個人破産のリスクが高いため、いずれの国でも主要な財源とはされていません。慈善事業は極度に困窮した人への救済手段としては有用ですが、規模が限られるため補完的な位置付けに留まります。実際には、税収と保険が医療制度の主たる財源となります。政府の第二の役割は、医療費をどのように賄うかを決定することです。
公共資金と民間資金の選択
公共医療制度では、医師や看護師、薬剤師への報酬は政府が税金や公的保険料で支払います。民間医療制度では、医療提供者は民間保険会社からの支払いを受け、保険加入者が保険料や自己負担金を支払います。政府の第三の役割は、ユニバーサルシステムを公共資金で賄うか、民間資金で賄うか、あるいは両者を組み合わせるかを決めることです。
二層医療制度
多くの先進国では、公共資金で賄われるユニバーサルヘルスケアに加えて、より高額なサービスを望む人向けの民間医療が併存しています。政府の第四の役割は、この補完的な民間医療の範囲と規模をどこまで認めるかです。二層制度は富裕層が医療費を直接支払うことで公共医療への資金流入を減少させ、結果として一般市民への医療資源が相対的に減少するという課題があります。米国は公的ユニバーサルシステムが存在せず、民間保険のみが主流であるため、保険に加入できない層は十分な医療サービスを受けられないという問題が顕在化しています。
医療の理念
政府が担う最も重要な役割は、医療を「商品」とみなすか「人権」とみなすかという根本的な立場を明確にすることです。医療を商品と位置付ける立場は、自由市場に委ねれば最も効率的かつ利益を上げられる医療システムが生まれ、個人は支払能力に応じてサービスを選択すべきだと主張します。一方、医療を人権と捉える立場は、政府が介入してすべての人に医療を提供すべきだと考え、利益率や個人の支払能力に関わらず普遍的なアクセスを保証することを目指します。これが政府の第五かつ最重要な役割です。
