黒死病流行時に医師は存在したのか?

黒死病と医師の存在

黒死病(1347〜1351年)は、ヨーロッパで約7500万~2億人が死亡したとされる歴史的な大流行です。この時代にも「医師」や「外科医」、さらには民間療法者が活動していましたが、当時の医学は現在の基準から見ると非常に限られたものでした。

1. 大学や師匠から学んだ医師(Physician)

大学や経験豊富な医師の下で学び、医学博士(MD)や医学士(D.Phys.)といった学位を取得した専門家です。体液説(四体液説)や感染の概念に基づく理論を信じ、診断と処置を行いました。

2. 床屋外科医(Barber‑Surgeon)

主に髪を切ったりひげを整えたりする床屋ですが、膿瘍の切開や骨折の固定、放血といった外科手術も行っていました。解剖学の実践的知識は持っていましたが、大学での体系的な教育は受けていないことが多かったです。

3. 民間療法者(Folk Healer)

薬草や祈祷、地域の慣習に基づく治療を行う人々です。正式な医学教育は受けていませんが、長年の経験と伝承に頼っていました。

4. 当時の治療法

主な治療は放血、下剤投与、そして「効能がある」と信じられたハーブの使用でした。これらは当時の医学理論に沿ったものですが、実際のペストウイルスに対しては効果がありませんでした。

5. 知識と技術の限界

医師は存在したものの、細菌学やウイルス学といった現代医学はまだ確立されていませんでした。感染症の原因が微生物であることが明らかになるのは、数世紀後のことです。ワクチンや抗生物質の登場まで、ペストに対する有効な治療は不可能でした。

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