感情を司る脳の部位はどこか?
脳は人間の体の中でも最も複雑な臓器で、未だ完全には解明されていません。進化の過程で、爬虫類型の古脳(archipallium)、哺乳類初期の古皮質(paleopallium)、そして新皮質(neopallium)という3つの主要な領域が形成されました。感情の主な制御センターは古皮質にある辺縁系で、理性による制御は新皮質が担います。この感情と理性のバランスが、人間を他の多くの種と区別する特徴です。
扁桃体(Amygdala)
側頭葉に位置するアーモンド形の構造で、さまざまな感情の生成に関与します。愛情や友情、恋愛といった肯定的な感情だけでなく、怒り、恐怖、攻撃性も扁桃体が司ります。自己防衛の中心でもあり、闘争・逃走反応を引き起こします。例えば、トラが怖いか上司が友好的かといった感情的評価もここで行われます。扁桃体が欠損すると、感情的な判断ができなくなります。
視床下部(Hypothalamus)
視床下部は闘争心や性欲、体温調節、渇き・空腹などの動機付け行動と結びついています。これらは強い感情と密接に関連しているため、怒りや快感、嫌悪感、笑いの衝動などを引き起こすことがあります。感情の生成というよりは表出に関与し、特定の状況ではパニックや不安を誘発します。
海馬(Hippocampus)
海馬は長期記憶の形成を担い、過去の出来事や刺激の解釈にも関わります。たとえば、かつて誰かに裏切られた記憶が呼び起こされると、海馬は他の辺縁系に恐怖や嫌悪の感情を引き起こさせます。海馬がなければ、過去の経験に結びつく感情を思い出すことができません。
視床(Thalamus)
視床は辺縁系の中枢として、扁桃体、視床下部、海馬からの情報を統合・中継します。視床が損傷すると、これらの部位間の連携が乱れ、感情行動に変化が生じると考えられています。
前頭葉(Frontal Lobe)
新皮質(neocortex)の一部である前頭葉は、問題解決、論理的思考、衝動抑制、判断を司ります。これにより、辺縁系が生み出す激しい感情を抑え、制御します。また、利他性や共感といった高度な感情も前頭葉の働きに関係しています。即時の欲求ではなく、長期的な満足感を追求する機能が特徴です。
