機密保持
精神保健カウンセラーは、クライアントの情報を守る機密保持義務を日々実践しなければなりません。米国精神保健カウンセラー協会(AMHCA)の倫理規定は、プライバシー保護と記録管理に関する厳格な基準を示しています。
機密情報の開示には、クライアント(または18歳未満の場合は保護者)の書面による同意が必要です。ただし、以下の例外が認められています。
- 自殺や他害の危険が予見される場合。カウンセラーは「重大かつ予見可能な危害」の有無を評価し、判断が難しいときはスーパーバイザーに相談します。
- 児童・高齢者・介護不能者への虐待やネグレクトが疑われる場合。各州の法令に従い、必ず報告義務があります。
- 有効な裁判所命令が出された場合。ただし、クライアントにその旨を伝え、記録の開示を拒否する権利があることを説明します。
STDや家庭内暴力などの情報を配偶者に伝えるべきかというシナリオは、機密保持の違反となり法的リスクを伴います。
二重関係(Dual Relationships)
クライアントとの関係が、カウンセリング以外の社会的・職業的つながりと交差する場合を二重関係と呼びます。AMHCAは可能な限り二重関係を回避することを求めています。
例外的に、日常的に接点のある人がクライアントになることは許容されますが、その場合は二重関係の存在を認識し、治療への影響をオープンに話し合うことが重要です。
クライアントとの性的関係
現行クライアントとの性的関係は、いかなる状況でも禁止されています。元クライアントが再びカウンセリングを受けに来た場合は、別のカウンセラーへ紹介するのが適切です。
カウンセラー自身がクライアントに対して性的感情を抱いた場合は、スーパーバイザーに相談し、治療継続が妥当かどうか評価します。独立している場合でも、同僚への相談は守秘義務に留意しながら行います。
元クライアントとの性的関係は、治療終了後最低でも2年が経過してからでなければ許可されませんが、実務上は避けることが推奨されます。
集団・家族・カップルカウンセリング
複数人を対象としたカウンセリングでは、各参加者の役割と関係性を明確に設定する必要があります。
機密保持のルールをグループ全体で共有し、書面による同意書を取得することで、プライバシー保護を強化できます。米国カウンセリング協会(ACA)も、集団・家族・カップルセラピーに関する具体的な倫理指針を示しています。
代表的な課題は「分裂(splitting)」です。ある参加者がカウンセラー側に過度に同調し、他のメンバーを排除しようとする現象で、グループの信頼と治療効果を損ないます。
同僚・従業員・スーパーバイジーとの関係
機関に勤務するカウンセラーは、クライアントだけでなく職場の同僚や部下との関係にも倫理的配慮が求められます。
スーパーバイザーは、臨床監督の際にケース情報を共有しますが、監督はあくまで指導・評価であり、治療セッションを行うべきではありません。監督時間が治療的にならないよう、必要に応じて職場の従業員支援プログラム(EAP)への紹介を検討します。
二重関係の原則はここにも適用され、スーパーバイザーとスーパーバイジーの関係は職務上のものに限定し、私的な友人関係は避けるべきです。
監督中に扱われたケース情報は、機密保持の例外が満たされない限り、外部に漏らすことはできません。スーパーバイジーは、クライアントに対して監督があることとその連絡先を説明し、インフォームド・コンセントの一部として明示します。
