大気汚染物質の人為的要因
人間の健康や環境への悪影響が懸念される「大気汚染物質」は、先進国・途上国を問わず各国政府の重要課題です。米国では1970年のクリーンエア法に基づき、環境保護庁(EPA)が粒子状物質、硫黄酸化物、地上オゾン、窒素酸化物、一酸化炭素、鉛の6つの主要汚染物質について大気質基準を設定しています。自然由来の排出は限られた対策しかできませんが、人為的な排出を大幅に削減することが自然環境保全の鍵となります。
固定源
固定源とは、工場や発電所、暖房用燃料装置、廃棄物焼却炉、金属鉱石の加工施設など、一定の場所に設置された設備からの排出を指します。EPAの全国排出インベントリ(NEI)によると、硫黄酸化物の約73%は火力発電所の化石燃料燃焼、20%は産業施設からのものです。金属精錬は少量の硫黄酸化物と大量の鉛粒子を大気中に放出し、呼吸器系の疾患を引き起こします。EPAは1971年以降、硫黄酸化物の基準を設定し、健康被害の防止に努めています。
移動源
移動源は自動車、航空機、船舶など移動する乗り物からの排出です。都市部では、一酸化炭素、窒素酸化物、揮発性有機化合物(VOC)の大部分がこの移動源から放出されます。窒素酸化物とVOCが日光下で反応すると、地上オゾンが生成されます。燃費改善技術が進んでも、車両数の増加や大型トラックの普及に伴い、米国では20世紀後半に排出量が増加しました。
森林火災
森林火災は化学反応以外の主要な粒子状物質の発生源です。農業や森林管理においては、制御燃焼が土壌改良や温室効果ガス削減に有効ですが、燃焼時に放出される微小粒子は吸入すると喘息悪化や肺機能低下を招きます。また、森林火災は一酸化炭素や地上オゾンの前駆体でもあり、都市部のスモッグに寄与します。EPAは2008年の「粒子状物質に関する大気質基準」報告書に基づき、粒子状物質の濃度を厳しく監視しています。
廃棄物処分
埋立地に投棄された有機廃棄物は嫌気性菌の分解によりメタンを生成し、同時に鉛化合物などの汚染物質も放出します。メタンは無毒ですが、極めて可燃性で窒息性があります。さらに、核兵器の製造・使用や化学兵器、ロケット開発など軍事活動も大気汚染の潜在的な原因です。大気汚染の削減には長期的な計画と環境保全への真摯な取り組みが不可欠です。
