2007年オーストラリアで起きた馬インフルエンザの大流行と対策
2007年8月、オーストラリアで前例のない規模の馬インフルエンザが発生しました。オーストラリアの国立科学機関であるCSIRO(コモンウェルス科学産業研究機構)によると、馬インフルエンザは「急性で高度に感染力が強く、ウイルス性の呼吸器疾患で、馬やロバ、ラバ、その他のウマ科動物に急速に広がる」病気です。統一された対策により、ウイルスは最終的に根絶されました。
発生経緯
オーストラリア高等裁判所元判事のイアン・カリナン氏が実施した調査報告によれば、ウイルスは日本から輸入された馬を通じて国内に持ち込まれた可能性があるとされています。感染は、馬に接触した人間や衣類、汚染された鞍具・装備品を介して広がります。馬インフルエンザは人間には感染せず、通常は致命的ではありませんが、老齢・疾患を抱える馬や未成熟な仔馬では死亡リスクが高まります。
症状
感染した馬は、体温が39〜41℃に急上昇し、乾いた咳や水っぽい鼻汁(次第に濃く臭いが強くなる)を示します。その他、筋肉痛やこわばり、呼吸困難、元気の低下、食欲不振なども見られます。
対策
オーストラリア連邦政府、州政府、業界団体が連携し、全国的な統一対策が実施されました。まず感染馬の検疫と、効果的なバイオセキュリティ情報の発信により、ニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州南東部での拡大を食い止めました。
CSIROのオーストラリア動物健康研究所では、血清学検査と、鳥インフルエンザ検出用に開発された高速PCR法により初例が特定されました。その後、ウイルスゲノムの一部を配列解析し、最適なワクチンを選定して接種が行われました。
検疫地域のバッファゾーンにいる馬や、価値の高い未感染馬にもワクチン接種が実施され、2008年3月にはオーストラリア全土で馬インフルエンザが根絶されたと宣言されました。
回復
多くの馬は約2週間で回復しますが、完全に回復するまで十分な安静が必要です。二次的な細菌性気管支炎や肺炎を合併するケースもあり、適切な抗生物質治療が不可欠です。
今後の推奨事項
カリナン氏の報告は、オーストラリアへの馬輸入に関する検疫とバイオセキュリティ体制の強化を提言しています。具体的には、入国前と入国後の検疫期間中にインフルエンザ検査を実施し、検疫施設の監視を徹底することが求められます。また、輸出コストや検疫費用、リスク評価の徹底的な分析も推奨され、これらの実施には約130万豪ドル(約1億円)の費用が見込まれています。
