DIEPフラップ手術の概要
DIEP(Deep Inferior Epigastric Perforator)フラップは、下腹部の脂肪組織に血液を供給する血管を利用した乳房再建法です。血管、脂肪、皮膚を一体として移植し、自然な触感と外観を持つ新しい乳房を作ります。
乳がんの基礎
乳がんは、80歳までに約8人に1人の女性が罹患するとされる疾患です。主なリスク要因は、女性であること、加齢、家族歴、食生活の偏り、運動不足、過度の飲酒などです。定期的なマンモグラム検査は早期発見と治癒率向上に重要です。
乳房切除術(マステクトミー)
乳がんの治療法には、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、手術があります。手術は腫瘍だけを除去する「乳房温存手術(ルンプトミー)」と、乳房全体を除去する「乳房切除術(マステクトミー)」に分かれます。マステクトミーは生命を救う一方で、身体的・精神的な回復が大きな課題となります。
DIEP手術のメリット
DIEPフラップ手術は、人工乳房インプラントに比べて自然な質感と外観を得られる再建法です。患者自身の組織を使用するため拒絶反応が少なく、余分な腹部脂肪の除去と皮膚の引き締めにより、体形改善効果も期待できます。マステクトミーと同時に行うことも、術後に別途実施することも可能です。また、インプラントと組み合わせることもあります。ただし、腹部脂肪が不足している方や血流に問題がある方は適応外です。
手術の流れ
まず乳房切除術の際に乳房皮膚や乳輪をできるだけ残します。その後、腹部に切開を入れDIEPフラップと周囲組織を採取し、血管顕微外科技術で乳房の血管に接続します。新しい乳房は採取した皮膚で覆われ、必要に応じて後日、乳輪のタトゥーや乳頭再建が行われます。
DIEPフラップとTRAMフラップの比較
TRAM(Transverse Rectus Abdominis Myocutaneous)フラップは、腹直筋とその周囲の脂肪・皮膚を利用します。筋肉を移動させるため、術後の腹部筋力低下や回復期間が長くなる傾向があります。一方、DIEPフラップは筋肉を残したまま血管だけを移植するため、腹部の筋力維持と早期回復が期待できます。ただし、血管顕微外科が必要なため手術時間はやや長くなります。
臨床研究
2009年に『Plastic & Reconstructive Surgery』誌に掲載された研究では、DIEPとTRAMの両手術が高い再建成功率を示しました。DIEPは血管顕微手術の複雑さから脂肪組織壊死(ネクローシス)のリスクが約2倍に上昇しましたが、発生率は低く抑えられました。また、腹部合併症はTRAMに比べて有意に少ないことが報告されています。
