人工心臓の歴史と課題
現在、瞬時に人を別の場所へ転送するというアイデアは『スタートレック』の未来像として語られ続けていますが、わずか50〜60年前には人工心臓を胸に埋め込むという考え自体がSFの領域でした。人工心臓の発明は医学史上最大級のブレークスルーといえるものの、現時点では多くの患者が長期生存できていません。
最初の人工心臓
最初の人工心臓は1957年にオランダのウィレム・コルフが発明しました。彼の助手であった赤津哲三が犬に移植し、約2日間生存させたことで医療界は研究熱を高めました。
初期の課題
血液が人工素材と接触すると損傷し、免疫系が排除しようとするなど、様々な問題がありました。また、ポンプの駆動電力や患者のストレス変化に応じた制御も困難でした。
ドミンゴ・リオッタと初のヒト移植
1969年、ドミンゴ・リオッタは初めてヒトに人工心臓を移植し、ハスケル・カープ氏はデントン・クーリー医師の手術により65時間生存しました。しかし、マイケル・デ・ベイキーはこの装置はまだ臨床使用に適さないと批判しました。
ロバート・ジャーヴィックとジャーヴィック‑7
1972年、ロバート・ジャーヴィックはウィレム・コルフと共同で人工心臓の設計に着手し、1979年にジャーヴィック‑7を特許取得しました。1982年12月、バーニー・クラークがこの装置を移植され、112日間生存しました。
開発への反発
装置を受けた患者の生活の質が低く、費用も高額であることから、人工心臓開発に対する批判が高まりました。その代わりに、ドナー心臓が利用可能になるまで患者を維持する装置が求められるようになりました。
左心補助装置(LVAD)
LVAD(Left Ventricular Assist Device)は、ドナー心臓が入手できるまで患者をサポートする装置です。人工心臓に比べサイズは約1/10に縮小され、電力消費も大幅に低くなっています。
まとめ
人工心臓の研究は多くの技術的・倫理的課題を乗り越えながら進化し、現在ではLVADなどの補助装置が臨床現場で重要な役割を果たしています。
