19世紀の薬用植物とその活用法
19世紀の医薬はほとんどがハーブで、医師・助産師・薬剤師すべてが自然の植物を薬として利用していました。ヴィクトリア朝時代は合成薬が存在せず、抗生物質もなく、1890年代に発見された有毒なピオシアナース以外は利用できませんでした。多くのハーブは安全性や有効性に問題があり、現在では違法となっているものもあります。
アヘン
ヴィクトリア朝では、ケシ(Papaver somniferum)から作られるアヘンが頻繁に使用されていました。古代ローマ人が中東・ヨーロッパへ伝え、ドイツの医師フリードリヒ・セルテュルナーが酸で抽出しアンモニアで中和することでモルヒネを単離しました。モルヒネから合成されたヘロインも当時は使用されていましたが、現在は違法です。19世紀には頭痛、痛風、マラリア、梅毒などの治療にアヘンやモルヒネが処方され、育児用にアルコールと混ぜたローダナム(ラウダナム)を赤ん坊に与えることもありました。この慣習は乳幼児の死亡率を高めました。
アブサン
アブサンは苦艾(Artemisia absinthium)を原料とした蒸留酒で、アルコールと組み合わせると麻酔作用があると信じられていました。胆石の破砕、記憶回復、疲労防止、リウマチ治療などに用いられ、シラミ予防や貧血、熱の予防、さらには毒蛇の解毒や危険動物除けといった根拠の薄い効能も主張されました。現在でもアルコール度数の高い飲料として販売され、過度に摂取すると幻覚を引き起こすことがあります。
コカイン
ヴィクトリア朝ではコカインは合法薬物であり、ヴィクトリア女王やロバート・ルイス・スティーブンソンらがワインに混ぜて使用した記録があります。コカの葉(Erythroxylum coca)から抽出されたこの薬は、うつ病の緩和、喉の痛みの鎮静、子供の歯痛緩和に用いられました。幼児を静かにさせる目的でコカイン点眼液が使用されたこともありますが、致命的な結果を招くことが多かったです。
ハーブ庭園
19世紀の農村部やアメリカ西部の開拓地では、薬用ハーブを自家栽培することが一般的でした。地域ごとの野生植物も利用され、ラベンダー(Lavandula angustifolia)は消化不良、頭痛、呼吸器系の症状に、ローマカモミールは消化不良や疝痛に、ペパーミント(Mentha piperita)は消化不良や頭痛、歯痛の緩和に、そしてマシュマロ草(Althaea officinalis)は呼吸器系の疾患に用いられました。
