発泡スチロール製飲料カップが及ぼす影響
ポリスチレンフォーム(商標名「スチロール」)は、軽量で断熱性に優れるため、レストランのコーヒーカップやテイクアウト容器、ファミリー・ピクニックで使われる皿やボウルなどに広く利用されています。しかし、ポリスチレンの構成成分であるスチレンは、さまざまな健康問題と関連しています。スチレンは熱い飲料や食べ物から溶出しやすく、特にアルコールや脂肪分の多い食品に溶け込みやすいです。1日4杯の飲料を3年間ポリスチレン製カップで飲むと、飲料とともに約1個分のカップに相当するスチレンを摂取する計算になります。
急性の健康影響
スチレンに過剰に曝露した場合の短期的な症状として、皮膚・眼・上部呼吸器の刺激や胃腸の不調が挙げられます。一般的に、ポリスチレン製カップや容器からの接触だけで急性症状が出ることは稀ですが、ポリスチレン工場の近くに住む人や製造現場で働く人は、頭痛、倦怠感、酔ったような感覚などの副作用を経験することがあります。
長期の健康影響
研究によると、スチレンに慢性的に少量でも曝露し続けると、うつ病やホルモン機能障害のリスクが高まります。スチレンはエストロゲン様作用を持ち、ホルモンバランスを乱し、甲状腺障害や月経不順を引き起こす可能性があります。また、血小板やヘモグロビンの低下、染色体異常、リンパ系の異常とも関連が指摘されています。スチレンは脳や脊髄、神経組織に蓄積し、疲労感、神経過敏、睡眠障害を招くことがあります。国際がん研究機関(IARC)はスチレンを「ヒトに対する発がん性が疑われる」物質として分類しており、乳がんや前立腺がんとの関連が示唆されています。
環境への影響
ポリスチレンフォームの製造は大量の液体・固体廃棄物を生み出します。米国環境保護庁(EPA)はポリスチレン製造を国内で5番目に多い有害廃棄物の発生源と位置付けています。製造過程で大気中に放出される炭化水素は地表付近に拡散し、窒素酸化物と反応して対流圏オゾンを生成します。このオゾンは胸痛や咳、喘鳴、運動時の呼吸困難を引き起こす大気汚染物質です。米国標準局の火災研究センターは、埋立地や廃棄場でポリスチレンが燃焼する際に約60種の化学副産物が大気中に放出されることを報告しています。さらに、ポリスチレン製カップや容器は米国の埋立地全体の体積の25〜30%を占め、野外に捨てられると破片となって野生動物の窒息や消化管障害を引き起こします。オレゴン州ポートランド市やカリフォルニア州オレンジ郡など、一部自治体では環境負荷軽減のためポリスチレンの使用を禁止しています。
代替品の選び方
自宅やオフィスでは、ポリスチレン製のカップ・皿・ボウルを陶器やガラス製のものに置き換えると安全です。テイクアウトや残り物を持ち帰る際は、すぐにポリスチレン容器から飲料や食べ物をガラスや陶器のカップ・皿に移し替えましょう。スーパーでは、プラスチックや発泡スチロールではなく、ガラス瓶やガラス容器に入った食品を選ぶとよいです。どうしてもプラスチックや発泡スチロール包装の食品しか手に入らない場合は、表面積を減らすためにできるだけ大容量の商品を選びます。また、ポリスチレン容器での電子レンジ調理は絶対に行わないでください。加熱によりフォームが溶け、スチレンが食品や飲料に浸出しやすくなります。
