アスベストがもたらす主な肺疾患と進行段階
アスベストは繊維状の鉱物で、耐火素材や断熱材として織り込むことができます。しかし、アスベストに曝露すると、肺がんのリスクが約4倍に増加し、喫煙者では50〜90倍にまで高まります。また、肺の瘢痕化(アスベスト症)や胸膜のがん(中皮腫)も引き起こします。
主に鉱山労働者、製粉業者、アスベスト製造業者、建設作業員、造船所の作業員などがリスクにさらされています。
アスベスト症(肺線維症)
アスベスト症は肺組織が瘢痕化(肺線維症)する疾患です。瘢痕により肺の弾力性が低下し、酸素・二酸化炭素のガス交換が妨げられます。初期症状は胸痛、咳、息切れで、病状が進むと肺活量が低下し呼吸が困難になります。発症までに10〜40年かかることがあり、進行は非常に緩やかです。
根治療法はありませんが、体位ドレナージや胸部叩打・振動療法で肺からの液体を排出し、気道分泌物を薄めるエアロゾル薬が処方されます。酸素療法や、重症例では肺移植が必要になることもあります。
肺がん
アスベスト曝露による肺がんは、発症までに約20年かかります。悪性腫瘍は気管支の粘膜に形成され、周囲組織へ広がり、最終的に気道を閉塞します。症状は他の呼吸器疾患と似ているため、早期発見が難しいです。
治療は化学療法・放射線療法に加え、外科的切除が行われます。肺の一部(楔形切除)や肺葉(肺葉切除)を摘出し、場合によっては全肺摘出が必要です。
中皮腫(胸膜がん)
中皮腫はアスベスト曝露の「マーカー」とされるがんで、胸膜や腹膜の裏側を覆う膜に発生します。発症までに30〜40年かかり、初期症状(息切れ、持続的な咳、胸痛)は他の疾患と類似するため、診断が遅れがちです。
治療可能かどうかで「切除可能(resectable)」と「切除不可能(unresectable)」に分けられますが、どちらの場合も化学療法や放射線療法が中心となります。診断後1年以内に死亡する患者は約75%に上ります。
