甲状腺がんの腫瘍マーカーとは?治療後のサイログロブリンとTSHの活用法

治療の基本

ほとんどの甲状腺がんは甲状腺全摘出術(甲状腺切除)を行い、手術後に放射性ヨードを投与して残存甲状腺組織を破壊します。

サイログロブリン(Tg)は甲状腺のみが産生するタンパク質です。全摘出と残存組織の除去が完了すれば、血中のTgは実質的に検出できなくなるはずです。手術後にTg値が上昇すれば、残存する健康な甲状腺がない状態で再発性の乳頭状がんや濾胞がんが疑われます。

フォローアップ

分化度の高い甲状腺がん(乳頭状・濾胞型)は全診断例の約90%を占め、増殖は遅く、標的治療に良好に反応します。そのため多くの患者の予後は非常に良好です。

再発は通常治療可能ですが、がんは手術後何十年も経ってから再び現れることがあるため、生涯にわたる継続的なフォローアップが必要です。

アブレーションとTgマーカー

「全」甲状腺摘出でも微量の残存組織が残ります。そこで手術後に放射性ヨードを経口投与し、残存組織を除去します。残存組織が除去されると、血中Tgがほぼゼロになるため、Tgは優れた腫瘍マーカーとなります。逆に甲状腺組織が残っていると、Tg測定は予後評価にほとんど役立ちません。

抗体の影響

甲状腺がん患者には自己免疫性甲状腺炎(橋本病)を合併するケースが多く、体内でサイログロブリン抗体(TgAb)が産生されます。これによりTg検査が信頼できなくなることがあります。

しかし、甲状腺全摘出後は多くの場合抗体産生が徐々に減少し、Tgが有用な腫瘍マーカーとして再び利用可能になります。Tg検査は必ず抗体検査と併用し、抗体が再出現した場合はがん再発のサインとも考えられます。

アブレーション直後にTgが低値であることは、良好な予後因子とされています。

TSH(甲状腺刺激ホルモン)管理

TSHは下垂体から分泌され、甲状腺ホルモンの産生を調節します。甲状腺摘出後は、甲状腺ホルモンを錠剤で補充し、TSHレベルを意図的に低く(抑制)保ち、がん細胞の増殖を防ぎます。

再発スクリーニングでは、TSHを一時的に高めることでがん細胞の取り込み能を増強し、放射性ヨード撮影やTg測定の感度を上げます。従来は甲状腺ホルモン投与を中止し、数週間にわたる「低甲状腺症」の症状(倦怠感、イライラ、体重増加)に耐える必要がありました。

現在は注射用組換えTSH(rhTSH)の利用が一般化し、ホルモン補充を続けたままスクリーニングが可能となり、患者の負担が大幅に軽減されています。

最新の動向

最新の研究では、血中Tg測定が中リスク患者の再発検出に有効であることが示されています。定期的なTg測定と組換えTSHの併用により、従来必要だった放射性ヨード全身スキャンの頻度が減少し、低ヨウ素食や「低甲状腺症」の苦痛を回避できるようになっています。

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