脳動脈瘤の歴史と診断・治療の進歩
脳動脈瘤の定義
脳動脈瘤は、脳内の血管が局所的に膨らむ状態です。膨らんだ血管が破裂すると出血し、くも膜下出血として知られる出血性症候群を引き起こします。多くはくも膜下腔(脳とくも膜の間)に形成され、破裂すれば致命的です。
脳動脈瘤の発見史
脳動脈瘤が最初に報告されたのは、解剖学的検死の過程です。18世紀末、イギリスの医師ギルバート・ブレインは、頭痛と視力障害、認知症を伴い死亡した患者の死因として脳動脈瘤を記述しました。19世紀を通じて、診断は主に死後の解剖に限られていました。
診断法の発展
1859年、ウィリアム・ウィジー・ガルは激しい頭痛が破裂性脳動脈瘤を示す可能性を指摘しました。1891年のヘンリック・クインケによる腰椎穿刺は、脳脊髄液に血液が混入しているかで破裂を検出できる手段となりました。1933年、イタリアの医師は造影血管撮影(アンギオグラム)で動脈瘤を可視化できることを示し、以降MRIやCTといった画像診断が普及しました。
治療の変遷
外科手術が発展した19世紀末まで、破裂・未破裂問わず治療は不可能でした。1931年にエジンバラの外科医ノーマン・ドットが頸動脈結紮術で初めて成功例を報告し、1966年にJ.ローレンス・プールが手術顕微鏡とクリップを用いたクリッピング手術を確立しました。近年では、カテーテルを用いてコイルを動脈瘤内に詰める低侵襲治療(血管内コイリング)が標準的に行われています。
臨床的意義
小さな動脈瘤は無症状であることが多く、サイズが大きくなるか破裂するまで気付かれません。破裂時は緊急手術が必要で、死亡率は高いです。米国では年間約2万5千件の破裂が報告され、その約半数がすぐに死亡します。ジョー・バイデン副大統領も破裂前に2回の動脈瘤を手術で除去した例が知られています。
