閉経後女性のホルモン補充療法(HRT)
閉経に伴うエストロゲンとプロゲステロンの減少により、ホットフラッシュや不眠、骨密度低下など様々な症状が現れます。かつては更年期障害の治療に標準とされていましたが、2002年の米国女性健康イニシアティブ(WHI)研究で、HRTが乳がんや心血管疾患のリスクを高めることが示され、使用を見直す動きが広がりました。
ホルモン補充療法の仕組み
HRTは、更年期で卵巣の機能が低下し産生が減少したエストロゲンとプロゲステロンを外部から補う治療です。ホルモンが回復すると、ほてり・夜間の発汗、関節痛、睡眠障害などの症状が軽減されます。
主な利点
- エストロゲンとプロゲステロンを補うことで、ホットフラッシュや不眠が改善されます。
- エストロゲンは骨密度を保ち、骨折リスクを最大80%低減します。
- 膣の潤いが向上し、性交時の痛みが軽減されます。
- 皮膚のハリが増し、尿失禁の予防にもつながります。
考慮すべき点
- 植物性エストロゲン(フィトエストロゲン)は骨形成を促進し、骨折リスクを低減するとされています。
- HRTは精神的な安定や認知機能の向上に寄与し、性行為時の疼痛を減少させる可能性があります。
- 閉経後のエストロゲン不足が原因と考えられる死亡リスクの低減が期待されています。
リスクと副作用
- エストロゲンは細胞増殖を刺激するため、乳がんリスクが約9%上昇します。
- 心血管疾患のリスクが約24%増加し、特に血栓症や心筋梗塞の危険性があります。
- 認知症、特にアルツハイマー病の発症リスクが若干上がる可能性が指摘されています。
HRTの種類
- 子宮が残っている女性は、エストロゲン単独投与が子宮内膜を刺激しがんリスクを高めるため、プロゲステロンと併用した「エストロゲン+プロゲステロン」製剤が用いられます。
- 子宮摘出術(子宮全摘)を受けた女性は、エストロゲン単独製剤でも安全に使用できます。
短期使用の可能性
- 長期的な使用は推奨されませんが、短期間(数年以内)の使用は大腸がんや骨粗鬆症の予防に有益とされています。
- 医師と相談し、個々のリスクとベネフィットを評価した上で使用期間を決定することが重要です。
HRTは全ての女性に適するわけではありません。症状の程度や既往歴、家族歴などを総合的に判断し、医師と十分に話し合ったうえで最適な治療法を選択してください。
