Enterococcus faecalis感染とは何か
Enterococcus faecalis感染とは何か
Enterococcus faecalisは出生直後からすべての人の腸内に常在する菌です。通常は無害ですが、稀に遺伝子変異により病原性を獲得し、重篤な感染症を引き起こすことがあります。主に入院患者で発症し、治療が難しいことが知られています。
遺伝子変異が病原性をもたらす
V583株のEnterococcus faecalisは、染色体17上の特定遺伝子が欠失するとヒト組織を攻撃できるようになります。この変異は2009年4月19日にオンラインジャーナル BMC Genomics に報告されました。
主な感染症例
変異したEnterococcus faecalisは、以下のような感染症を引き起こします。
- 腹壁の術後感染
- 皮膚の注射部位感染
- 髄膜炎
- 尿路感染症
- 菌血症(血液汚染)
- 心内膜炎(心臓内膜の炎症)
2006年~2007年に米国疾病予防管理センター(CDC)が報告した28,502件の院内感染のうち、約12%がEnterococcus属によるものでした。
症状
感染部位により症状は異なりますが、共通する一般的な症状は以下の通りです。
- 発熱、倦怠感、疼痛、全身倦弱
- 皮膚感染:紅斑・かゆみ
- 髄膜炎:項部硬直、過度の眠気、食欲不振
- 菌血症:悪寒、低血圧
- 心内膜炎:呼吸困難、夜間の発汗、不整脈
治療
Enterococcus faecalisは多くの抗生物質に耐性を示します。アミノグリコシド系や細胞壁合成阻害薬(例:アモキシシリン、セフトリアキソン)を長期投与することで治癒が期待できますが、腸内の善玉菌も死滅させ二次感染のリスクが高まります。また、ネオマイシンやゲンタマイシンなどのアミノグリコシドは聴覚障害や腎障害を引き起こすことがあります。
予防策
CDCは2008年に150ページ以上にわたる院内感染防止ガイドラインを公表しました。主なポイントは、医療従事者が表面や医療機器を徹底的に清掃・消毒・滅菌することです。ただし、Enterococcus faecalis感染の多くは患者自身の腸内菌が原因であるため、手術前後に予防的に抗生物質を投与することが推奨されます。特に歯科手術や胃腸手術など感染リスクの高い手術では注意が必要です。
