デング熱における肝機能検査の意義と活用法

デング熱は蚊が媒介する感染症で、熱帯・亜熱帯の湿潤地域に広く分布しています。重症例では出血熱や血管透過性の亢進、肝障害、さらには致死に至ることがあります。診断には皮疹・発熱・出血症状の有無に加え、血液検査(全血球計算、アルブミン、肝機能検査)を総合的に評価します。本稿では、デング熱診断における肝機能検査(LFT)の意義と具体的な所見について解説します。

重要性

デング熱は東南アジア、アフリカ、太平洋諸島、そして中南米の熱帯地域で流行しており、年間で5,000万〜1億件の感染が報告されています。そのうち数十万件が出血熱(DHF)に進行し、致死率は約5%です。米国への旅行者でも毎年100〜200件の感染が確認されており、地域医療においても無視できない問題です。

診断における位置付け

デング熱が疑われる患者は、発熱、インフルエンザ様症状、頭痛、眼痛、皮疹などの臨床所見とともに、肝機能検査を含む血液検査を実施すべきです。特にデング流行地域への渡航歴がある場合は、診断の際に必ず考慮に入れます。身体診察で肝臓が肋骨縁下2〜4cm程度拡大していることがしばしば認められ、重症例(デングショック症候群)では顕著です。

肝機能検査の概要

肝機能検査は血清中のビリルビン、アンモニア、各種酵素(AST、ALT、ALP、GGT)を測定します。これらの数値はデング熱に特異的ではなく、他の肝疾患でも上昇しますが、臨床像と合わせて評価することで診断の手がかりとなります。

  • ビリルビン:非抱合ビリルビンの上昇は肝障害を示唆し、黄疸として臨床に現れることがありますが、デング熱患者で黄疸が見られることは稀です。
  • アンモニア:肝臓で尿素へ変換されるべき物質が血中に残ると、肝機能低下を示します。
  • AST・ALT:肝細胞障害の指標で、デング熱では軽度から中等度の上昇が一般的です。
  • ALP・GGT:胆道系や肝臓の総合的な機能評価に用いられます。

検査結果の特徴

デング熱患者の大多数で AST、ALT、GGT の上昇が認められ、ビリルビンや ALP の上昇は一部に限られます。ALT・AST の上昇は通常は 2 倍程度ですが、出血熱を伴う重症例では 10 倍以上になることもあります。酵素値は発症から約 9 日目でピークに達し、2 週間以内に正常範囲へ戻ります。

留意点

デング熱による肝機能異常は、B型・C型肝炎患者の検査結果とほぼ区別がつきません。また、同時感染(デング熱+肝炎)の可能性もあるため、肝炎ウイルス検査と合わせて総合的に判断する必要があります。デング流行地域から来た患者で肝機能障害が認められた場合は、まずデング熱を疑い、適切な血清学的検査やウイルス分離を行うことが重要です。

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