鼻に存在する細菌の有病率と疫学は?
鼻腔は多様な細菌が共存する「鼻マイクロバイオーム」の住処です。これらの細菌は感染防御や免疫発達、さまざまな生理機能に関与し、健康維持に重要な役割を果たしています。鼻に見られる細菌の有病率と疫学は多くの研究で明らかにされており、以下に概観します。
有病率
1. Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)
健康な成人の約30〜50%が鼻腔に保有していると推定されています。
2. Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)
約20〜40%の健康な人に検出されます。
3. Moraxella catarrhalis(モラクセラ・カタラリス)
一般集団の10〜30%で見られるグラム陰性菌です。
4. Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)
特に非定型株は健康な人の5〜15%で検出されます。
5. Corynebacterium 属
C. diphtheriae や C. accolens など、30%までの人が保有することがあります。
疫学
年齢
乳児は細菌多様性が低く、成長とともに多様性が増し、成人になると安定します。
環境
農村部に住む人は都市部に比べ、鼻腔細菌の多様性が高い傾向があります。
健康状態
免疫不全、慢性呼吸器疾患、抗生物質使用などは鼻マイクロバイオームを変化させ、病原性細菌の定着リスクを高めます。
地域差
気候、生活様式、遺伝的背景の違いにより、地域ごとに細菌の有病率と組成が異なります。
宿主因子
遺伝子や免疫応答といった個人差が、特定細菌の定着と持続に影響します。
鼻マイクロバイオームは時間とともに変動しやすく、常在菌と宿主・環境要因の相互作用がその安定性と機能を決定します。鼻腔細菌の有病率・疫学・役割を正しく理解することは、呼吸器感染症の予防・治療や健康維持に向けた戦略策定に不可欠です。
