多発性硬化症と記憶・認知機能の問題
多発性硬化症(MS)は、筋肉機能の低下だけでなく、記憶喪失や認知機能の低下を引き起こすことがあります。記憶の保存・検索、情報処理、出来事の想起、計画や優先順位付けといった高次の認知機能が影響を受けます。
脳性MS
MS患者の約70%が何らかの認知障害を示し、特に初期段階の患者の約50%で記憶障害が見られます。主な問題は注意力、記憶、語彙検索、抽象的思考です。感情の不安定さや情報処理速度の低下も報告されています。重度の認知障害がある場合は「脳性MS」と呼ばれ、患者自身が自分の記憶障害の深刻さを認識しにくいことがあります。
記憶障害のタイプ
- 最近の出来事や名前・電話番号、服薬時間などを覚える「短期記憶」の低下は、MSで最も頻繁に見られます。
- コンピュータの使い方や自転車の乗り方といった、長期間にわたり習得した「手続き記憶」や「遠隔記憶」への影響は比較的少ないです。
実行機能への影響
記憶障害は、タスクの優先順位付けや計画立案、問題解決といった実行機能にも影響します。概念間の切り替えや迅速な思考が必要な場面で困難を感じ、迷路の中にいるような感覚に陥ります。
記憶障害への対処法
認知リハビリテーションに取り組むことで機能回復が期待できます。日常的には、メモを取る、チェックリストを活用する、作業を思いついたらすぐに実行する、物は常に同じ場所に置く、重要なタスクに集中して優先順位を付けるといった工夫が有効です。
電子記憶補助具の活用
スマートフォンのカレンダーやリマインダー、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)などの電子ツールは、日々の予定や必要な情報を管理するのに役立ちます。音声レコーダーで重要なメモややることリストを録音する方法も有効です。
